(星里もちる/エンターブレイン ビームコミックス・全3巻)
北海道から東京に転校してきた岡原佳枝は気温が30度以上になると汗が爆発するという特異体質。なんと汗がニトログリセリンで出来ているのだ。
瓦礫飛び散り爆風が舞い、爆音とどろく彼女の周囲。それでものほほんな家族や、いつも彼女を真剣にフォローしてくれる彼氏・いくろうくん、住吉署の刑事達に守られ一応平穏無事な生活を送る佳枝だったが、彼女の前にいくろうくんに横恋慕する赤面高熱症少女・園部その子さんが現れて・・・
まさかこのHPでこの作品を紹介する日が来るとは思いませんでした。ビバ21世紀。15年経ってもやぁっぱり佳枝ちゃんはかわええのぉ〜・・・と言うわけで気合い入れてインプレです。
とにかくこの作品で光っているのは明るい雰囲気。それは芸人魂を備え、だじゃれを愛する牧野少年の明るさであったり、佳枝ちゃんをほのぼのと見守る両親の明るさであったり、周囲の人々が醸し出す、どこか牧歌的な明るさであったりするワケなんですが、やはりその中心で太陽のように光り輝いているのは、爆発体質というコンプレックスにもめげず、いつも笑顔を失わない佳枝ちゃんの明るさ。彼女の笑顔に照らされるように、作品全体が無垢な明るさに満ちていて、そこがとってもうれしいんですよね。
そして、籠城犯だったり学芸会だったり修学旅行だったりオーディションだったり、巻き起こる雑多なイベントや事件の数々がいいアクセント。そのどれにも「なんとかなるさ」的のーてんきさがあって、シリアスにならない、そこにこの作品のポイントがありますね。陰に籠もらないから、素直に佳枝ちゃんの笑顔を堪能できるなー、というか。
コンプレックスに負けない心とか、お互いを思う気持ちとか、まっすぐなテーマを爆発風味でくるみ、ほんわかした気持ちが胸に芽生えてくるような作品。何年経ってもいい作品はいい、ですね。
佳枝ちゃんらぶらぶ〜(はーと)
今でこそ栞ちゃん萌え〜とか、さくらちゃんにはにゃ〜んとか、ちーちゃん先生癒して〜とか、年甲斐もない言動を連発し、キャラクター要素中心にマンガを読んでいる私ですが、キャラクターをメインにマンガにはまったのは、この作品、ヒロインの佳枝ちゃんが初めてだったという気がします。いわば、初恋のヒトならぬ、初萌えのヒトなんですね〜
そのかわいさは初出から15年たった今もまーったく衰えることなし。無造作にたばねられたポニーテールと後れ毛、そしてきらきらのおっきな瞳に満面の笑顔。時に涙を浮かべたり、おろおろしたり、怒ったり、多彩な表情を見せてくれますが、そのそれぞれが全方位的にかわいくって、久し振りに読み直しても、やっぱり心の中が萌え〜んとなって来ちゃうんですよね。そして、全身からみなぎる元気爆発〜!勢いあまって汗も爆発してしまう〜!というような、夏少女ムードが画面から溢れてきて、心臓がばくばく爆発しちゃうのですね♪
この作品に置いて、もしかして佳枝ちゃん以上に忘れてならないであろう存在が、牧野一家。
佳枝ちゃんの彼氏、ねこがねこんだいくろうくんは、ものまねとだじゃれを両輪に、片時も忘れることのない生粋の芸人根性と、佳枝ちゃんを思うストレートが魅力的な少年。優しさをうまく表現できず、時にギャグに包み込んでしまうシャイさがいいですね。
その姉、サボテンゴンベー冴子さんは美貌と芸人魂のギャップがいっそ美しいですね。いくろうとの姉弟漫才はこの作品の白眉、芸道もまた爆発だ!という感じでいいですね。
そしてがるる牧野父。この親にしてこの子あり、という他にコメントが見あたりません。いい味だしすぎです。ブラボー。
最後になりましたが、黒髪ショートボブ眼鏡っ娘の園部その子ちゃん。他人に心を開けない赤面高熱症の彼女が、次第に心を開いていく物語は、この作品のひとつのハイライト。回を重ねていくごとに魅力を増していく彼女が良いですね。
正直言うと、ノリや展開的な部分では安っぽいというか、子供っぽい部分は否定できないんですが、それを補って余りあるのが明るく前向きな雰囲気。「明るい作品が読みたい」という人にはぴったりな作品でしょう。最近の星里さんとはムードも絵柄もがらっと違っていますので、その辺はご注意を。
2001.3