入浴ヤンキース

(奥嶋ひろまさ/双葉社アクションコミックス・1〜2巻)

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Story

近ごろ噂のヤンキーコンビ「タイガー&ドラゴン」、松井竜哉と黒田大河はケンカに明け暮れる最強コンビ。
そんな彼らの強さには秘密があった。
それは銭湯。
彼らは銭湯でケンカの汗を流し、熱い銭湯で身体を仕上げて「銭湯態勢」を整える、銭湯ヤンキーだったのだ。
ケンカ相手と戦闘を探して東京を駆け回る彼らの活躍と、魅惑の銭湯の数々を描いたアヴァンギャルドでどこかほのぼのとしたヤンキーマンガのニューウェーヴ。

Impression

いきつけの本屋にて。
新刊コミックスのワゴンを眺めるともなく眺めていると、珍妙なタイトルが背表紙に書かれた本が目に飛び込んできました。その名も、「入浴ヤンキース」!!
「まさかヤンキーが入浴するだけのマンガじゃあるまいな……」と思いつつ、導かれるようにそのマンガを手にすると。
そのものズバリ、ヤンキーが入浴するだけのマンガでした! ……どこにこんなニッチなマンガの需要があるんじゃ〜〜〜! と菊の湯(松本駅前)の方角に叫びつつ、思わず購入。ヤンキーマンガなんて読むの、「湘南爆走族」以来じゃね? と思いつつ読んでみると。
案外面白かったです。
「タイガー&ドラゴン」を名乗る主人公のツッパリコンビが、都内の不良に絡んだり絡まれたりしつつ、都内に実在する銭湯を訪れるというシンプルだけどやっぱりどこにニーズがあるんだかさっぱり分からない構成。しかしシブい銭湯の魅力をしゃべくり担当の松井竜哉がヤンキー用語をふんだんに交えながらハイテンションに紹介するノリがなんとも愉しくて、「ワケ分かんね〜」とか叫びつつもしっかりクセになっちゃうんですよね〜。
主人公が松井(銭湯のロッカーはもちろん55番)と黒田(ロッカーは18番)、通っている高校は武論楠高校で担任教師は桃里(とうり)先生と、本家・ニューヨークヤンキースネタもこっそり仕込んでいるあたりも嬉しいポイント。
ヤンキーマンガの痛快さと、銭湯の爽快さを併せ持つ、昭和レトロなニューウェーヴです。

Tiger & Dragon

本作品のメイン、四番とエースを張るのが松井竜哉と、黒田大河の「タイガー&ドラゴン」。松井と黒田。はい、しっかりヤンキースしてますね。
で、「タイガー&ドラゴン」のよく喋る方、口ゲンカ無敗のリーゼント野郎が松井竜哉。必殺の拳で瞬く間に相手を倒し去る、オールドスタイルの痛快な不良少年です。
しかし彼の持ち味が発揮されるのはケンカでも口ゲンカでもなく、ズバリ銭湯。
「天下湯一(てんかとういつ)」「沸く沸く(ワクワク)すんな」「(桶に)紋紋が入ってる マブいっ!!」「裸・首領(ラドン)っ!!」「銭湯準備万端」「上湯(じょうとう)じゃねーか!」などなど、ヤンキー用語を駆使した謎の言語センスで都内の銭湯を紹介してくれる、ハイテンションなナヴィゲーターなのです。
その相方が「タイガー&ドラゴン」の無口なヒットマン、金髪オールバックがトレードマークの黒田大河。三次元の足技で無数の敵も一気になぎ倒す戦慄の不良少年にして、授業中に「老人と海」(ただし授業とは関係ない)(ちなみに新潮文庫版)を読んでたりするインテリ系のヤンキーです。
ということで銭湯ではおしゃべりな竜哉のサポート役に回っていますが、お風呂の効能や泉質に関するうんちくを手短に挟んでくれたり、銭湯の快適さをヴァリエーション豊かな仏像顔になって表現してくれたりで、しっかり銭湯の魅力を伝えてくれています。
そんな彼らの好感ポイントは「校則は破っても銭湯マナーは絶対に守れ!」という銭湯への深い愛と熱い侠気。
テンション高くてなに言ってるのか分からないケンカ上等のヤンキーなのに、……彼らを見ているとたまらなく銭湯に行きたくなってくるから、不思議です。

Guide

令和のご時世にヤンキーマンガというのもどうかと思いますし、紹介される銭湯はあくまで東京ローカル。かなり対象範囲の狭い、ニッチな作品ですね。そういうところは気にせずに「明るいヤンキーマンガ」として楽しめる方か、東京の銭湯めぐりが好きな方なら楽しめると思います。
MLBファンの方ならニューヨーク・ヤンキース絡みの小ネタでさらに楽しめると思いますが、野球に詳しくないから楽しめない、ということはありません。

2021.7