（中島沙帆子／竹書房バンブーコミックス・全２巻）
晴れて大学に入学、独り暮らしを始めた田中美月は、やおいマンガ「愛の泥沼」の大ファン。大学入学を機にパソコンを買ったのが運のツキ、やおい系ネットに勉強寝食デートに友達づきあい、すべてを投げ出してハマり込む日々に突入してしまう。
やおいネットの人々の生態を交えながら、やおいネットワーカーの日々をつづった「トホホでそれなりに幸せな」四コママンガ。
やおい趣味＋ネット。
それなりの裾野を持つ趣味ジャンルではありますが、所詮「分かる人は分かる、分からない人は分からない」、そんなマイナージャンル。
「一体全体、こんなジャンルで連載４コマなんか成り立つのか〜？」と冷やかし半分で読み始めたんですが、中途半端なディープさがいい感じにマニアハートをくすぐってくれたようで、ハマるのに時間はかかりませんでした。
さすがにジャンルがジャンルなので、なかなかコミックスにはなりませんでしたが、２００２年７月、ついに待望の刊行！！！！
こうなったら推して推して推し倒すしかありません。
「え〜？やおい〜？美少女ならともかく、美少年にはキョーミないぜ」、という方も多いでしょうが、ちょっとお待ちを。やおいをネタにしたマンガといえども４コマですから、男×男のディープなシーンはなし。で、そのへんをクリアにしちゃえば、やおい趣味とコミック美少女趣味、似て非なるものと口では言ってみても、根っこに流れるものは同じ。同じ趣味の方ならひとつやふたつどころか２０や３０は美月ちゃんの言動に思い当たって赤面したり背中がむず痒くなったりすることがあるはずです。
個人的にも、「あ゛ー、彼女とのデート断って浦和にコンサート見に行ったなー」とか、「会社の終業式をテキトーな理由つけて休んで、コミケ行ったっけなー」とか、なーんとなく旧悪（いや、悪は現在進行形なんですが）を暴露されてる気分になってなんちゅーか、うれしはずかしな気分になっちゃう作品で、このＨＰをいつも楽しんでくださっている方々に、ぜひともおすすめしたい作品です。
黒髪ショートカット女子大生！
と来れば、
「萌え〜っ」のセリフが続くのが当サイトの定番、セオリー、常識なのですが。
ネット＆コミック依存症中期患者のヨッパライといたしましては、萌えるより先に美月ちゃんの思考パターン・行動パターンに納得したり共感したりで、あっと言う間にシンクロできちゃうんですよねー。
この「中級」というトコロがミソなんですね、美月ちゃんの場合。
ネット生活初体験からずぶずぶとネット依存症に身を滅ぼしていき、それと同時進行でやおいへの傾倒度が加速度的に深まっていくプロセスは、わかるひとには痛いほどわかるポイントですし、やおいを愛する誓いを立て、チャットがなければ生きて行けないカラダになろうとも、カレシや友達の前ではパンピーとりを繕う生きざまもまた、社会生活とマニアライフの板挟みに悩む中期患者には大納得（これが開き直った末期患者じゃスリルと面白みがなくなっちゃいますからね）。
これほど行動パターンにいちいち納得できるキャラもいないんじゃないかと思える感じで、とにかく共感度抜群のキャラなのです。
はっきり言って読み手を選ぶ作品。ですが、このサイトに来て、ここを読んでくれてるような方ならきっと問題ないと思います。
なお、「やおい」という単語がタイトルに含まれたりしてますが、男×男の絡みシーンはありませんので、期待した方、不安に思っていた方、あしからず。
２００２．８