ヨコハマ買い出し紀行

(芦奈野ひとし/講談社コミックスアフタヌーン・1〜9巻)

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story

近未来。
海面の上昇により住処を追われた人間たちの生活は、いくつもの時代を逆上ったような懐かしさのある「夕凪の時代」で繰り広げられていた。
岬の突端にある喫茶店「アルファ」の店をひとりで切り盛りするのは、アンドロイドのアルファ。
彼女の周囲では、楽しくも懐かしく、切ない人々によってドラマにならないようなドラマが流れていく。

impression

アルファさん、最高じゃぁぁぁぁぁぁ!
と、いつもの私なら特別本醸造吉田屋治助の瓶を握りつつ、浅間山の肩に沈むカシオペア座に向けて叫ぶところですが、うーん、アルファさんの場合は、
「あ、いいな」
などと呟きつつ、キャラメルティーを片手に蓼科高原の紅葉を眺める午後三時、という気分になってしまうんですね〜。
いや、ココネにしてもミサゴにしても、ガソリン屋のおじさんやその他のキャラクターにしても・・・
「あ、いいな」
なんですよね〜。
とにかく各キャラクターの持つ人間くささが良くて、シチュエーションの儚さが良くて、時々に見せる表情が良くて、紅茶でも酔えるほどに素敵な雰囲気なのです。なんか、こういう時間が流れる世界ににふっと旅をしているような感じ。
この本を読むだけで心が熱燗でも飲んだように内側からあったかくなる。
そんな素敵な作品です。

guide

ある程度想像力を要求される作品のような気がします。そういう意味ではある程度マンガを読みこんでいる人向けの作品かもしれません。
しかし、ややこしい設定とかは一切なく、絵本でも読むようにすっと作品世界に入って行けます。キャラクターの行動に悪意のようなものが感じられず、かつ嫌味な感じもないので、すんなりと心に入ってくる作品だと思います。
青年誌掲載の作品ですが、女性でもかなり楽しめるのでは?という気がしますね。

  1999.11