欲望と恋のめぐり

(刑部真芯/小学館少コミCheese!フラワーコミックス・全5巻)

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Story

全寮制の名門私立校、宝条学院の1年生・唯野七葉は遅刻しそうになり近道にと選んだ馬場で馬の蹄がかすり、怪我を負ってしまう。馬上から七葉の男は美形だったが、七葉をいたわることもせず、無礼な物言いをしたあげく最後は七葉を突き飛ばす始末。
憤りを抑えられない七葉だったが、その男が学園でも一目置かれる大名・英家の末裔、絹だと知って・・・
英絹とその周囲の男たちをメインにした、濃厚な連作学園ロマンス。

Impression

馬術だったり、閉鎖された学園だったり、和歌だったり、そんな小道具の数々が闇色の淫靡さを醸し出す、見応えのある和風学園ラブストーリーです。
1話40ページあまりの適度なボリュームの中で、女のコを捕える心の軛と男の欲望が交錯する物語は読みごたえ十分。「Cheese!」掲載作品ということで、作品の中にはえっちシーン(描写は思いっきり甘いですが)も盛り込まれているんですが、それがストーリーに濃さと、どことなくのリアリティを与えていて、ずしんとした読み重りを読者に与えているんですよねー。
そしてラストに優しくて、ちくんとするような名シーンを用意してるあたりもナイス。
「ちょっとH」だからこそ描ける濃厚なラブストーリーに、心で、頭で、身体で感じてしまう、存在感のある作品です。

Charactor

ワンパターンですけどね。いつものことですけどね。
黒髪ショートカット可憐系、参ノ章のヒロイン・緑青桃ちゃんがかわいくていーのだぁ。一身にトラウマを抱える華奢さと、穐(ほんとは少し違う字なんですがフォントにないのでこれで代用)への思いを抱えた一途な仄かさが絶妙のハーモニーを奏でるキャラクター。幸せになって欲しいと心から願いたくなるような、保護欲をくすぐる女のコですね。
もひとり、穐の幼なじみで四ノ章のヒロイン、若狭綾ちゃんもなかなか。黒いロングへアーが醸し出す清楚な雰囲気にもうぞくぞくっ!と来ちゃいますね。どこかで解放を望んでいる感じがにじみでてくるあたりが絶妙です。
男性キャラもなかなか魅力的。少女マンガの男性キャラというと女のコの理想を集約した、男から見ると「こんな理想の男いるわけねーじゃん?」となぜか横浜弁になってしまうようなキャラクターと相場が決まってるわけで、まぁこの作品も例外じゃないんですけど、直情を抑えられないような脆さをみんな抱えていて、そこがなんとなく男性読者にも納得出来るんですよね。
てなわけで個人的には鳩羽優がちょっとお気に入りだったりします。

Guide

今までこのHPで紹介してきた少女マンガとは、ちょっと毛色の違う作品です。ご注意を。
時代がかったシチュエーションと、こってりした雰囲気を味わいたい感じですね。コメディ要素はなく、完全に恋愛描写(それもティーン向けの)に徹した作品。しっかりと腰を落ち着けながら、ひとつひとつのページを丁寧に追う感じで楽しみたいですね。
やっぱり夜に読んだ方が気分が出るかなー。

2001.8