（刑部真芯／小学館少コミＣｈｅｅｓｅ！フラワーコミックス・全５巻）
全寮制の名門私立校、宝条学院の１年生・唯野七葉は遅刻しそうになり近道にと選んだ馬場で馬の蹄がかすり、怪我を負ってしまう。馬上から七葉の男は美形だったが、七葉をいたわることもせず、無礼な物言いをしたあげく最後は七葉を突き飛ばす始末。
憤りを抑えられない七葉だったが、その男が学園でも一目置かれる大名・英家の末裔、絹だと知って・・・
英絹とその周囲の男たちをメインにした、濃厚な連作学園ロマンス。
なかなか興味深い作品ですね。
殿様の子孫・英絹をメインに据え、全体的に和風のテイストを出した学園ロマンス。馬術、茶道、短歌といった道具仕立てに黒と白のコントラストが効いた画面、Ｃｈｅｅｓｅ！掲載作品らしい濃厚な恋愛描写が加わり、漆のように艶やかな雰囲気を演出しています。
各エピソードはどこかにトラウマや痕を抱えた少女と、自己表現が下手な少年の恋愛というかたちで綴られ、描写の濃さと相まって全体にとがった印象を与えてくれます。そのへんが印象に残るエピソード作りという点で役立っていますね。
４０ページあまりのエピソードを緩やかなアップダウンで運んだ後、最後は少女マンガらしく印象的な大ゴマで締め、雰囲気の重さの割に読後感が軽いのはなかなか得難いポイントです。
２００１．８