ゆるゆり

(なもり/一迅社百合姫コミックス・1〜15巻)

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Story

赤座あかり、歳納京子、船見結衣。幼なじみの女子中学生3人は、廃部になった茶道部の元部室を無断で占拠、「ごらく部」として活動していた。
もっとも「活動」と言っても、部室でぐだぐだしていて、無駄に時間をつぶすだけ。
しかし、アニメキャラ「ミラクるん」にそっくりな吉川ちなつが仲間になったり、生徒会副会長の杉浦綾乃が部室の明け渡しを求めてやって来たり。ゆるゆるまったりのはずが、案外時折刺激的だったりするガールズトークコミック。

Impression

アニメの二期も終わって、今さら感がこの上ないタイミングの紹介ですが!
大ヒット百合コメディ「ゆるゆり」の紹介です。
なんで私が今さらなタイミングでこのマンガを読むようになったかというとですね。
冬コミの際に上京した折、高校時代の友人たちと呑んだり、「萌えなじみっ!」のスタッフと駄弁ったりしたした折にですね、「最近百合要素のある萌え四コマとか多いよね〜。あれが意外となかなかツボでさぁ。創作の方もそっちに引きずられがちで……」なんてことを口走ったところ。
「なら、『ゆるゆり』が合うと思うよ」「……ってか、読んでないんですか?」「あれは抑えておくべき」「……っつーか、読め」と、4人にオススメされちゃったんですね〜。
いろいろな人からいろんなオススメを受けて来ましたが、同時期に4人というのはもちろんびぜんや新記録。さっそく買って来ました。
で、読んでみると、おお〜、なるほど面白い。
いや〜、いい友人を持ったとひたすら感謝したくなりました。
まぁどこがツボかって、数ページにまとめられたネタの、ピッチの効いたリズムが心地よく、次から次へとネタが展開されるので、ページをめくる手が全然止まらなくなっちゃうんですよね〜。
萌え系、和み系のまったり感に、さらに不条理スレスレのすっとぼけたネタが絡んできて、きちんと笑えるところもポイント高し。
もちろん女のコたちはみ〜んなかわいくて、個性的で、よりどりみどり感たっぷり。
うん、皆さんにオススメされるのが納得のクオリティだったのです。
大ヒットも納得の、読んでおなかいっぱいになれるショートコメディ。
私からも、オススメです。

YuruYuri Girls

本作品の主人公……ではないらしいけれど、明らかにメインを張っているのが歳納京子ちゃん。
常にハイテンション、いつもオーヴァーアクション、突っ込みどころ満載のムードメーカー。思いつくままの行動で周囲を翻弄する自由人っぷりがいっそチャームポイントになっている、まさに「ゆるゆり」のエンジン、本作品のフラッグシップですね。
まぁ、そばにいてほしいキャラ……じゃないですし、恋人にしたいタイプ……でもなく、まあ、リアルでこんなコがいたらうざいだけのよーな気もしますけど。
だからこそ、存在感があって楽しい女のコなのです。
またかと言われそうだけど、気づいたら14年もこんなコト言い続けているけど、黒髪ショートカット爆萌宣言ーーーーーーーーーーーーーーーッ!
というわけで、京子に対するツッコミ担当が船見結衣ちゃん。テンション高めの女のコが揃っている中で、貴重なクール系のツッコミ役です。
揺れる心をしっかりオブラートに包んで、大人びた行動をとるあたりがいいですね〜。クールな中にも抱擁力があって、京子、結衣、ちなつ、あかりの4人組の中ではお姉さん的存在なのです。
京子ちゃんに想いを寄せ(?)ているのが、生徒会副会長の杉浦綾乃ちゃん。マジメで、だけどスナオになれなくて、でも視線はいつも京子ちゃんを追っちゃって……という、あきれるほどにピュアなツンデレキャラ。
京子ちゃんに翻弄されても、翻弄されても、相手の些細な仕種にキュンときちゃうオトメな表情がかわいくて、たまらないんですよね〜〜〜。
綾乃ちゃんと生徒会で名コンビを組んでいるのが、メガネっ娘の池田千歳ちゃん。メガネを取ると妄想世界にダイヴ・イン。京子ちゃんと綾乃ちゃんをオカズに百合妄想を繰り広げつつ、鼻血をまき散らすというかなりインパクトの高い関西っ娘なのです。タイトルに「ゆり」とつきながら、女のコ同士の接近接触が少ない当作品において、貴重な百合要素補給装置。「ゆる」と「ゆり」をひとりで補強してくれる、ナイス脇役なのです。
同じく生徒会では次期副会長を狙うライヴァル・古谷向日葵ちゃんと、大室櫻子ちゃんもいい味出してますね〜。
ハイテンション暴走キャラの櫻子ちゃんに対し、押され気味になりながらもクールにいなして、いつのまにかイニシアチヴを取っている向日葵ちゃん、というパワーバランスがいいのです。
吉川ちなつちゃんは「ごらく部」で、京子ちゃん、結衣ちゃんの後輩。結衣ちゃんへの思いを隠そうとしない、貴重な百合系行動原理の持ち主です。まぁ、オモテウラがはっきりしすぎている気がしないでもないものの、それも結衣先輩に対する好意の裏返しだったりして、実に女のコらしいキャラ、といえるのかも知れませんね。
……おっと、紹介を忘れるところでした。本作の主人公が、赤座あかりちゃん。主人公なのに存在感がずば抜けて薄いという、画期的な属性の持ち主です。天使のようにピュアなマインドの持ち主ゆえ、個性派揃いのメンバーの中に入ると、ボケにもツッコミにも回れないという独特のポジション。しかしそれだけに、あかりちゃんの存在は本作品の一服の清涼剤になっているのです。

Guide

まぁ、今さらあえて紹介する本でもないですけどねぇ。
タイトルに「ゆり」とついてはいますがもちろんガチな百合作品ではなく、女のコ同士のじゃれ合いを愛でるタイプのマンガ。そちらの要素を求める方は余所へお回りください、という感じですね。
萌え四コマ好きのひとにはかなり親和性の高い作品でしょう。ひとつひとつのネタがコンパクトにまとまっている分、中毒性が高い気がしますね。

2012.10