ありす19th

(渡瀬悠宇/小学館少コミフラワーコミックス・1〜5巻)

ハイテンションモードへ

Story

瀬野ありすは内気な高校一年生。いつも陽気な姉・真由良の影に隠れるカタチで、憧れの先輩・若宮叶への気持ちも伝えられぬまま、真由良に先を越されてしまう。
「勇気がほしい・・・」
そう願うありすの前に、「お前はもう・・・持っているはずだ 『勇気』を扱えるはずだ」と告げる者が現れる。
ニョゼカと名乗った彼女−民族衣装のようなものに身を包んだ不思議な童女−は、ありすを他者の心の中の世界−インナーワールド−の戦いへと誘う。
有刺鉄線が張りめぐらされた、荒んだ深層心理の戦場で、ありすは『聖なる言葉(ローティス)』を使い、危機を脱する。その時、そこで出会ったもうひとりの『聖なる言葉の使い手』は−姉の恋人、若宮叶だった・・・

Impression

渡瀬さんの作品紹介はこれで4作目。ヒットメーカーとして、安定した作品をリリースする氏の作品だけに、安心して読み込めます。
「ふしぎ」がスケールの大きな中華風アドベンチャー、「セレス」が和風仕立ての、少し大人っぽいサスペンス的作品とするなら、「ありす」は北欧のテイストを取り入れ、内面描写を重視したドラマ作品、といった印象があります。
ヒロインに内気な少女を据え、「少女コミック」誌読者にシンクロさせながら、「少女の成長」をしっかり描こうとしている、そんな意図が感じられます。
とはいえ、もちろん渡瀬作品の前例通り、キャッチーなビジュアル、ハイテンションなコメディやアクションシーンも十分に備えられており、幅広い読者の要求に応えられるファンタジーになっています。

2002.10