ブレーメンU

(川原泉/白泉社ジェッツコミックス・全5巻)

ハイテンションモードへ

Story

99.999999999%。その緻密な仕事ぶりから「イレブン・ナイン」の異名を持つ女性宇宙飛行士、キラ・ナルセは、スカイ・アイ社の大型宇宙輸送船の船長に抜擢される。
しかし、その船「ブレーメンU」は、遺伝子工学と生物工学の粋を集め、人間と同じように仕事をし、人間とコミュニケーションをとれるように進化させた動物達を乗組員に採用していた。
2306年。人類と動物の宇宙史にあらたな1ページを書き加え、「ブレーメンU」は多難な航海に乗り出した・・・

Impression

独特のノリで固定ファンの多い川原さんの新作。少女誌「メロディ」連載の作品ですが、「ジェッツコミックス」ブランドでの刊行となっています。
前述の通り川原さんは「脱力系」とでもいうべき独特のノリが売り物で、なかにはそれが行き過ぎて少々辛い事もありますが、この作品はその辺の色合いが薄く、全体にしっかりしたムードで、読みやすい感じがあります。
作品の印象としてはテキストが多く、それも天文学やロケット工学、物理学などに絡んだものが多くて、少女マンガとは思えない硬さ。次から次へ事件が起き、それをキラ船長以下のクルーが一致団結して解決していくというストーリーもオーソドックスな感じで、全体の流れとしては「よくできた学習マンガ」的な感じがあります。その部分だけでも、きちんとしたテンションの張り方と、スパイスとなる専門用語の入れ方でなかなか楽しめるのですが、さまざまな場面でそのぴんと張りつめたムードをすっとかわす脱力系の小ネタが効いていて、取っつきやすい、個性的な作品になっています。
全体的にベテラン・川原さんらしい上手さが窺える、ボリュームある作品ですね。

2001.5