(黒宮魚/芳文社ファズコミックス・1〜2巻)
とある冬、白市秋葉の家にひとりの女のコがやってきた。
長く赤い髪、赤い瞳が印象的な少女の名はシャーロット。秋葉の父の再婚相手の連れ子なのだった。
言葉は片言で、人と話すことが苦手な引きこもり気質の彼女とは、コミュニケーションをとることもままならない。
だが、彼女に頼まれて赴いた野球場「ゴールドフィッシュスタジアム広島」で、秋葉は豹変したシャーロットの姿、「球場のシャーロット」を見ることになる。
1巻のオビによると「野球観戦×義兄妹ラブコメ」ということですが、ラブコメとして読むには「定番の流れを教科書通りに抑えときました」という感じで、物足りないのが正直なところ。
読みどころは「野球観戦」の方ということになりますね。突き抜けきれない選手陣、歯がゆい戦いを続けるチームというのは甲子園球場や京セラドームやバンテリンドームの外野席でいつも感じていた隔靴掻痒感がうまく表現されていますし、その中でマスコットだけがやけに存在感を放っているというのも皮肉というかリアル。
だからスタンドから見た球場のパノラマだったり、逆転打が飛び出した時の興奮だったりがエモーショナルに感じられて引き込まれますし、どこか垢抜けない作品の雰囲気も野球観戦という昭和由来のレジャーにはぴったり合っているような気がします。
褒めてるんだか褒めていないんだかわからないような書き方になってしまいましたが、ハマる人はハマるだろうし、そうでない人は……な作品であることは確か。そして、これを読み終わると「野球、見に行きたいな」と思ってしまうのも確かです。
2025.6