(春田なな/集英社りぼんマスコットコミックス・全4巻)
恋に憧れる女子高生・桜井紗雪は友達に誘われて行った海で、出会った男性に一目惚れする。
相手が同じ春英高校にいると知った紗雪は、登校日に校内を捜し回るが、どの学年にも想い人は見つからない。
それもそのはず。
海で出会った男性は春英高校の家庭科教師・萩原克弥だった。
一度は「ありえない」と思った紗雪だったが……。
垢抜けた画面作りと、読者がシンクロしやすいキャラクターメイクで、「りぼん」誌のレギュラー作家になった春田ななさんの第3長篇です。
正直なところ、過去の2作品は少女誌らしい華と賑やかさを持つ一方で、群像劇的で、どこか散漫な印象が否めなかったのですが、今回は生徒と教師の恋愛というシンプルなテーマを前面に出し、焦点のはっきりした分かりやすい作品になっているところに好感が持てます。
悠士や香住先生と言った個性的な脇役が、ヒロインの紗雪を食いかねないほど目立っているのですが、ストーリーの軸がしっかりしており、紗雪の心理がていねいに描かれているため、彼らに軸が持っていかれるような印象はなく、むしろ春田さんの持ち味である賑々しさと、作品の奥行きを両立させる働きをしています。
今時の女の子たちが読む作品らしいポップな作風と、コンサバなラブコメ構造がうまくバランスしており、今後が楽しみな作品です。