クプルムの花嫁

(namo/KADOKAWAハルタコミックス・1〜3巻)

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Story

金髪ギャルの女子大生・しいなは、交際している銅器職人の修から求婚を受ける。
それを承諾し、婚約者となったしいなだが、銅器職人の世界は分からないことだらけの上に、頑固者ばかり。
それでも彼女は持ち前の明るさで、銅器職人たちの世界へと飛び込んでいく。

Impression

新潟県の燕三条地域を舞台とし、鎚起銅器の職人仕事を軸に据えた、なんとも手堅いイメージの作品。
そういう意味では寡黙な鎚起銅器職人・修を活発な幼なじみ・しいなが照らし、引っ張り、支えるという構図もありきたりではあるんですが、地に足の着いたこの作品ではこの「マンガっぽい」キャラクターバランスが作品にほどよい動きを与えて感じられます。
寡黙な職人たちの対極的なキャラクターとしてしいなを「ギャル」と設定したのはなかなかのヒット。しかし興味本位で動く薄っぺらなキャラクターにはせず、純粋で根の優しい女のコとしたことで、読者に親しみやすく、読者と作品世界を滑らかにつなぐ役割を果たすとともに、作品に涼風を吹き込んでいます。
修としいなという初々しい婚約者同士がふたりの生活を作り上げ、ふたりの世界を広げていく様を揺ぎ無い真ん中に置きつつ、新潟の様々な風物が作品に彩りを加え、おまけで語られる祖父母のなれそめが作品に深みを加え、鎚起銅器に関するディテールが作品にリアリティを加えているところも好感度大。これらの要素はストーリーの邪魔をすることなく手際よく物語に挿し込まれており、このへんの巧さもひとつの読みどころと言えるでしょう。

2022.10