（やぶうち優／小学館てんとう虫コミックススペシャル・全１巻）
小学五年生の聖夜の父が作った家庭用介護ロボット（試作品）、その名も「イブ」。
１０歳の少女の外見を持ったイブは、聖夜の同級生として小学校に通いはじめるが、常識や情緒のデータが未成熟な彼女は、そのストレートな行動で聖夜たちをおどろかせてしまうのだった。
「ちゃお」から学年誌に舞台を移したやぶうちさんの新作は、アンドロイド少女の人間への憧れを通じて、子供たちの成長を描いた作品。やぶうちさんがメインフィールドとする分野で、さすがに手堅くまとまっていますね。これは個人的な感想ですが、どこか実験作的ムードがあった「ちゃお」時代の作品に比べ、「ちゃお」最終連載作の「ぴゅあ・ぴゅあ」、小学六年生連載の「少女少年」、そしてこの「ＥＶＥ★少女のたまご★」と、テーマを絞った作品の方が手堅い感じで、読みごたえが感じられますね。
同一テーマの作品を連発しながら、やぶうち作品を続けて読む固定ファンにも飽きさせないところは絶妙。この作品の場合なんと言ってもヒロイン・イブのキャラクター性が強く、彼女の「成長」に視点を絞った事でストーリーの流れがつかみやすく、分かりやすい作品になっています。
学年誌掲載という事で暗い描写はないながら、適度なアップダウンでストーリーに引き込まれるあたりも絶妙。気軽に楽しめる中編ですね。
２００１．６