(釜田・六つ花えいこ・vient/角川フロースコミックス・1〜5巻)
湖のほとりに庵を結ぶ魔女・ロゼはある日とある貴族の訪問を受ける。
その相手とは街に出かけた日、恋に落ちた相手、ハリージュ・アズムだった。
しかし彼の注文は彼女の淡い思慕を踏みにじるものだった。「惚れ薬を作ってほしい」「拒否権はない」。その言葉を受けたロゼの対応は……。
失恋から始まる、魔女と騎士とのロマンスストーリー。
タイトル買いした作品で、最初はもう少しポップな作品かと思って手にしたら、案外淡々としてリリカルな少女系ファンタジーだった、というのが第一印象。落ち着いているけれどもパンチに欠ける、というのが読みだしての感想でした。
しかし、浮世離れしたロゼと堅物なハリージュ、どっちもどっちでマイペースなふたりのやりとりはどこかすっとぼけていて、思わずくすりと笑ってしまうもの。一方で淡々とマイペースなように見えるストーリーの中に、魔女に課せられた呪いや差別、あるいは貴族たちの事情、そしてままならぬ想いといったシリアスなテーマが隠されていてヤマ場には事欠かず、次から次へとページをめくってしまうリーダビリティの高さが隠されています。
一発で読者を掴み取るというよりも、二度、三度読んで旨味を味わいたいタイプの佳作です。
2025.6