(柊あおい/集英社文庫コミック版・全6巻)
沢渡香澄は同級生の泉沙樹、森下真理子とクッキングクラブを作ることに。何のことはない、真理子の片思いの相手、久住くんのいる弓道部が調理室から見えるのだ。しかし香澄もまた、久住くんに心が惹かれていってしまう。しかし香澄の心の中にはもうひとり、すすき野原で「シリウスの星のかけら」をくれた男の子がいるのだ。が・・・
連載開始が1985年という旧作なのですが、個人的に思い入れの深い作品でもあり、このほど文庫版も刊行されましたので、これを機会に紹介させていただきます。
文庫版のコミックというと、どうしてもネタ、絵柄、センスといったものが古く映りがちで、当時の思い入れに反して、読んでみるといま一つつまらない、というケースが多いのですが、この作品に限ってはそんなこともありませんでした。
確かに絵柄やセンスの古さというのは否定できませんが、突出した要素がないのに感情移入のしやすいキャラクターや、中高生の恋愛というオーソドックスで地味なテーマにもかかわらず、スピーディーな展開で読者を引きつける部分などは、今でも色あせていません。
知りそめの恋の淡さ、切なさを柔らかな雰囲気で描いた好作品です。
1999.2