化粧した男の冒険
−メルカトル鮎の事件簿−

(風祭壮太・麻耶雄嵩/秋田書店サスペリアミステリーコミックス・全1巻)

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Story

麻耶雄嵩(まや・ゆたか)さんのミステリー短編集「メルカトルと美袋(みなぎ)のための殺人」をコミック化。
避暑地のペンションで刺殺された男はなぜ、死後、化粧を施されていたのか?そして彼を殺した犯人は・・・?魅力的な謎に満ちた表題作をはじめ、4つの難事件を、タキシードにシルクハット、そして奇矯な言動の銘探偵・メルカトル鮎が鮮やかに解決する。

Impression

なかなか楽しいミステリー作品です。魅力的な謎を切れ味よく解き明かすストーリー作りは、さすがという感じがあります。ストーリー本体としては、心理描写が少なく深みに欠ける感じがありますが、その部分は探偵倫理のかけらもない銘探偵・メルカトル鮎の意地の悪いキャラクターと、狂言回し的な役割を持つ美袋三条の存在で十分以上に補っています。深みを味わうというよりは、エンターテインメントとしての面白さを追求したような感じで、潔さを感じますね。
このテの作品だと、原作とコミック版でのギャップというのが気になったりもしますが、もともと原作がコミック的な、キャラクター要素重視の作品であり(もともと麻耶作品はアニメネタが随所に出てきますし。この本でも地名に「小土茶」などというのが出てきます)、作画者の色合いは感じつつも、原作の雰囲気がいささかも色あせていなかったのも高ポイント。「メルカトルと−」を既読の方でも楽しめると思います。

2001.10