(たかみ裕紀・蒼山サグ・てぃんくる/アスキー・メディアワークス 電撃コミックス・全12巻)
「桐原中の司令塔」として県内に名を轟かせたバスケ少年・長谷川昴は、期待を胸に七芝高校に進学するが、入学から7日目、不祥事による活動謹慎という形でその夢を奪われる。
伯母で小学校の女子バスケットボール部顧問をしている篁美星になかば唆され、なかば脅されるようにして、昴は慧心学園女子バスケットボール部の臨時コーチを務めることになるが、児童たちはバスケットボールのルールもロクに知らない素人ばかり。しかし彼女らには強くなりたい、自分たちの居場所を守りたい理由があった。
バスケットボールを軸に、少年の熱意と少女たちの想いが交差する、「さわやかローリング・スポコメディ」。
バスケットボールをテーマにしたライトノベルのコミカライズ作品です。
原作は大きく括れば「日常系ライトノベル」の括りに入るのでしょうが、今風のライトノベルのフォーマットを踏襲しつつ、スポーツ小説のテイストをしっかり利かせた作品になっています。
さて、これをどう料理してコミカライズするか、ということになるんですが、原作では昴少年の視点で描かれるため、ともすればあっさり書かれがちだったヒロイン・智花の内面にフォーカスを当て、キャラクターとストーリーに深みを与えているところが印象的。それにより「ライトノベルらしさ」がやや足りなかった原作を、ヒロインの魅力が前面に押し出されたコミックにシフトさせることに成功しています。
描画的な部分で、バスケットボールのディテール、スピード感という部分が物足りないようにも思われるんですが、動から静、静から動への切り返しが小気味よく、意外にスピード感を感じられますし、智花のジャンプシュートや智花と昴の対決などは、胸踊るシーンとしてしっかりと刻み込まれる印象があります。
作画のたかみさんが、作品世界をしっかり理解した上で巧みにアレンジしている、その上手さを味わえる好作品だと思います。
2011.7