(笹木一二三/小学館ちゃおコミックス・全1巻)
片思いしていた幼なじみに「彼女できたんだ」と告げられた織は、不思議な少年に連れ去られるように、傷心を抱えたまま海へ。少年・智鹿太郎は、海辺でごみ拾いをしながら、「シーグラス」を集めているのだった……「おやすみメモリーズ」
扇は合コンに行きたくないばかりに、友人・港人とつきあうふりをすることに。だけどそれがなんだか心地よくて……「うそつき彼氏」
万年学年2位の逸美は、学年1位の真継に勉強を教えてもらおうとするが、真継の勉強法はあまりにも独創的なもので……「ライムブルー、赤く」
学園生活と初恋を、リリカルに色鮮やかに切り取った、珠玉の短編集。
これが初コミックスという新人さんの作品集ですが、新人離れした存在感を放つ短編集ですね。
表題作は失恋という導入部から、無理に明るいムードに持っていくことはせず、それでもそのままラストまで読ませるリーダビリティの高さが目につきます。
一転、「うそつき彼氏」では「ちゃお」らしいかわいい恋愛劇を展開。
かと思えば「ライムブルー、赤く」では、童話的というか幻想的な、理詰めではなくムードで押し切るような意欲作を展開。
変幻自在な作風が、興味深いルーキーといえます。
カヴァーを見れば分かる通り、ヴィジュアルも平均点以上。しかし、まだまだ描き込むことでこなれて行きそうな伸び代が感じられますね。
年少誌向けのキャッチーさに欠けるだけに、今後「ちゃお」で連載を持ったときにどうか、というのは懸念材料ではありますが、今後に注目したい新人さんの登場です。
2014.3