(たかみね駆/NHK出版・全1巻)
たかみね駆さんの初単行本。プロ野球選手1名を各回ごとにピックアップ。独特の視線で4コマ劇を展開する。
野球4コマの世界というのはこの何年かで大きく質的転換をしたような気がします。とはいってもそんなに昔の事はよく知らないんですが。5、6年前までの野球4コマというと、コジローさんややくみつるさんに代表されるように、プロ野球選手の言動やプレーを皮肉たっぷりに、とくには毒気を交えて描くものが多かったような気がするんですが、最近の、たとえばみずしな孝之さんや荒木ひとしさんといったあたりは、選手をモデルに独自のキャラクターを作り、そのキャラクターにいろいろな行動をさせて楽しむというタイプ。ある種同人誌的な作り方だと思います。
この作品はその「野球4コマニューウエーブ」の嚆矢とも言える作品。雑誌連載時は、まだレギュラーを取ってないころの元木大介とか、藤本博史とか、音重鎮とか、よくもまあ玄人受けするような人を選ぶものだと、毎回楽しみにしていた記憶があります。毎回違う主人公で話を書くんですから、作者のたかみねさんはさぞかし大変だったと思うんですが、そうとは思えないクオリティの高さ。どんな素材でもたちどころに自家薬籠中のものにし、自分の味付けで出す名シェフのようです。
雑誌連載が終了したときは本当にがっかりしましたが、ダイジェスト版とはいえこういう形で出版されたのはうれしい限り。たかみねさん流の起承承結というか、ひたすら上げて上げて落とす、落語のようなリズム感も心地よく感じられます。少しネタは古いのですが、野球の好きな方におすすめの逸品。現在雑誌連載中の「さわんだふるA!」も早く単行本化してほしいものです。切に。
1999.1