(くりきまる/竹書房バンブーコミックス・全3巻)
尾張織田家の跡取り・信長は、美濃・齋藤家から帰蝶姫(濃姫)を嫁に迎えようとする直前、突如逐電する。
慌てた父・信秀と家臣の平手政秀は、窮余の策として信長の身代わりを仕立てて祝言に臨ませることにしたが、なんとその替え玉は女のコだった。
戦国の史実を巧みに織りまぜながら展開する戦国替え玉アットホームコメディ。
ワタクシ、こう見えて歴史小説、特に戦国時代をテーマにしたものを読むのが結構好きでして。
まぁ、だからと言ってスナオに歴史もののコミックを買う、ということはあまりないんですが、戦国をテーマにしたコメディなどはうっかり買ってしまうことがままあります。
ただ、このテの作品、登場人物名を戦国武将から名前を借りただけで考証がまるでなってないとか、作者の歴史観が私と合わないというケースも少なくなく、決定打、と言えるものに出会うことがありませんでした。
そんな中、膝を叩いて唸らされたのが当作品。
信長の替え玉が女のコという思いきったアイディアと、実際の歴史に基づいたディテールが無理なく同居しており、第1話を読んだときから「コミックスでまとめて、たっぷり読みたい!」という気持ちにさせられました。
けして「信長」の名だけを借りた軽薄な作品にならず、しかし蘊蓄に傾いた説教臭い作品にならず、ひたすらアットホームを貫いているのはこの作品の美点。
今後も「信長」というテーマをどう料理してくれるのか、掲載誌を読んでいても毎月毎月次が気になって仕方なくなる、楽しみな作品です。