(犬上すくね/小学館サンデーGXコミックス・全7巻)
「すべての揉め事はボールとラケットで解決する」、ヤクザ・東ノ本宗則が経営するコンビニ「ラバーズ7」では、揉め事を起こしたものは宗則に卓球勝負を挑まれるのが掟。アルバイトの森岡ひろみもこの店で万引したところを見つかり、卓球勝負に敗れて、破格に安いバイト料で使われているのだった。
そして卓球場に新たな犠牲者がやって来る。万引を見つかった、無口な少女・なつき。
その相手は宗則に指名されたひろみ。勝てば自由をかち得るひろみと、負ければ「肉奴隷として」働かされるなつき。万引少年と万引少女の、明日を賭けた卓球勝負が始まる。
青年誌を中心に、少女マンガ的なテイストを含んだ恋愛系作品を発表して来た犬上すくねさんの、横浜・伊勢佐木町を舞台にした青春コメディです。
作品の中心となるのは無口でちょっとミステリアスな女子高生・なつきで、彼女と宗則の間に絡む過去と、彼女が徐々に「ラバーズ7」の人たちに心を開いていく様子がストーリーの軸になっているんですが、彼女に対して、宗則、ひろみ、スーら各キャラの視点からの描写がなされており、さらになつき自身の視点も挿入することで、キャラクターと作品世界が立体的に立ち上がって来ています。
あくまでなつきをメインに据えつつも、群像劇的な面白さを兼ね備えており、読み飽きないタイプの作品と言えます。
2004.3