(高橋しん/小学館ビッグコミックス・全7巻)
この作品は 鉄 屋 さんのご紹介を頂きました。
北海道。
元陸上部で、口下手なシュウジと、のろまで気弱なちせは、ぎこちないながらも彼氏と彼女として付き合っていた。
しかし札幌に空襲があった日、シュウジは驚愕すべき事実を知ってしまう。
ちせは人工の体を持ち、天空を駆けて敵機を討ち落とす「最終兵器」になってしまっていたのだ。
とろくさい彼女が実は最終兵器、というSFかコメディにしかならないようなシチュエーションで、本格的ラブストーリーをやってしまうという、なかなかすごい作品です。
ノリは違いますが、昔の星里もちるさんのマンガや、西澤保彦さんのSFロジックミステリーのような方向性を感じました。
若干詰め込みすぎというか、説明不足のきらいはありますが、1冊の中にキャラクターの魅力を前面に押し出したシーンあり、笑えるシーンあり、そして泣かせるシーンありと、ボリューム感ある構成で、それらが盛り上げたり落としたり、何気ないシーンがページをめくると衝撃的なシーンに転じたりと、読者の期待を心地よく裏切る方向に配置されていて、とにかく印象に残る構成になっています。
好むと好まざるとにかかわらず人を殺める兵器となってしまったちせの心情がぼろっと出てくるあたりなど、特に印象的。
全体を通して高橋さんの筆力が伺われる、力強い一冊です。
2000.6