（こがわみさき／エニックスステンシルコミックス・全１巻）
他人の心が読める少女・相田さんと自己表現が下手な少年・黒川の出会いを描いた表題作、犬嫌いの転校生・スグルと愛犬家の唄子、そして伝説のわんこ様の物語「おあずけわんこ」など、ファンタジーのエッセンスを加えた、優しい出会いの物語五編を収めた、ハートフルな短編集。
ずっと前からこがわさんの作品を紹介しようとは思ってたんですが・・・
・・・結果的になんだか中途半端な時期の紹介になってしまいました。
ファンタジー的な設定を隠し味に、オーソドックスなストーリーを印象的に見せる短編の名手・こがわさんらしく、今回も心に残る優しい作品の詰まった一冊になっています。
ビジュアルにしてもムードにしても、優しく淡い雰囲気に満ちており、メッセージを強引に読み手に押しつけてくるような印象はないんですが、巧みなストーリー運びで独特の結論に読者を導く展開の巧さがあります。
その上で、キャラクターの心理が、読者が共感しやすいキャラクターとモノローグのテンポのよさでしっかりと読み手に伝えられ、いつのまにかヒロインの本音がむき出しにされ、嫌味なくメッセージが読者に伝わってくる、心地いい読後感へと繋がっていきます。
こがわさんらしい独特の個性が感じられる、クオリティの高い短編集です。
２００３．６