(芝田わん・佐伯さん・はねこと・優木すず/スクウェア・エニックスガンガンコミックスUP!・1巻〜)
藤宮周がひとり暮らしをするマンションの隣部屋には天使が住んでいる。
高校のクラスメイトで、容姿端麗、成績優秀、品行方正な姿から「天使様」と呼ばれている椎名真昼が。
真昼のことを近くに住んでいても遠い存在と感じていた周だが、雨の日、傘も差さずに迷子のような表情で公園に佇む真昼に傘を差しだしたことがきっかけで、ふたりの距離は縮まりだす。
お隣さん同士のラブコメ、ズボラな主人公と完璧超人のヒロイン、クールというかドライなふたりが少しずつ距離を縮めていく物語、と、作品のプロフィールだけを切り出せばありきたりのラブコメということになってしまうのですが。読んでみると丁寧に作られたマンガで、一度、二度と読み返すたびに惹かれていく魅力に満ちています。
冒頭、雨に濡れた真昼の迷子のような表情であったり、病床の周が「妙に可愛らしい」と述懐した気を許したような微笑であったり、あるいはあきれ顔であったり、考え込む顔であったり、そして心を鎖したような醒めた表情だったり、台詞を先回りする形で、表情で真昼の心中を伝えてくる描写には説得力があって作画の巧みさが感じられます
同じようなシチュエーションを繰り返しながら、真昼が周の生活に、心に入り込んでいって距離を縮めていく丁寧なストーリーメイクは原作の美点なのでしょう。
良い原作と良いマンガ家が融合し、ノベルでは描かれなかった部分をしっかりと補完した、何度でもじっくりと味わいたくなる好作品です。
2022.9