(武田日向/角川書店ドラゴンコミックス・全3巻)
本草やえかは「すずの動物病院」で実習中の獣医のタマゴ。もちろん動物大好き。
動物が好きな気持ちが暴走して時折失敗もするけれど、同僚のせなちゃんや鈴乃先生に支えられながら、一人前の獣医になるべく奮闘中だ。
多彩なキャラクターを交えながらやえかの日々の奮闘をつづる、ハートウォーミング・ショートストーリー。
まぁ、正直なところ「萌え」狙いで買った作品なんですが(笑)。雰囲気、あるいはハートウォーミング要素も備えていて、思っていた以上に楽しめる作品でした。
作品の構造は、賑やかで無邪気なヒロイン・やえかをど真ん中に据えた、キャラクター要素の強い13ページのショートストーリー。
13ページというのは1エピソードで終わらせるには多く、ストーリーを組み立てるには足りない中途半端な枚数ですが、この作品は1エピソードで勝負。やえかのどたばたしたキャラクターだけが際立ち、他のキャラクターがでしゃばらないことや、無理にオチをつけたりせずに、余韻を味わわせるようなエピソードの切り方で、エピソードが間延びしているというよりも、むしろ物足りなさすら感じるようなところがあり、そこがこの作品独特のムードに繋がっているような気がします。
やえかとの対比で各キャラクターの内面を浮き彫りにするような心理描写や、ていねいに描かれた背景描写もよく、あまたの萌え系雰囲気重視作品の中で、アタマひとつ抜け出ているようなクオリティがありますね。
2002.6