ゼロイン

(いのうえ空/角川書店角川コミックスドラゴンJr.・全12巻)

ハイテンションモードへ

Story

叩き上げの刑事を父に、エリート警察官を兄に持つヘタレ少年・白石光は、銀行強盗に遭遇したピンチと、父を逆恨みした男に家宅侵入されたピンチを、ともに同級生の美少女・爲妹(なずめ)みくるに救われる。
彼女は、凶悪犯罪の増加に対処するために警察活動の一部を委嘱された民間機動警察隊、通称「民警」の敏腕エージェントだったのだ。
家宅侵入事件で妹・渉菜を守れなかった光は、自分を鍛え、愛する家族を守るために民警の短期訓練に参加する。彼はそこで、過去のトラウマから、敵の急所を撃てないという弱点を鍛え直すためにやって来たみくると出会う。

Impression

バランスを意識したキャラクターメイク、口癖による個性づけなど、今の「萌えコミック」の要素をしっかり応用して読者を引きつけ、てきぱきしたアクションで引っ張るタイプの、いかにも男のコ向け、といった作品です。
キャラクターについてはハイテンションモードで紹介するとしまして、ここではアクションについて書きますが、ガンアクションにつきものの銃器に関するディテールも、犯人に関するバックボーンも最低限にとどめ、キャラクター描写やストーリーにページを割かれた残りのわずかなスペースに、きっちりとアクションを詰め込んで、読者の要求に応えています。
アクションシーンは画面も整理されて、リズムもてきぱきしており、さらにアイディアもしっかりしていてページ数以上の充実感があり、よく練られているな、と感じられます。
練られているのは設定も同様で、スーパーガール的なみくるに「過去のトラウマで犯人の急所に照準を合わせることが出来ない」という制限を設けたり、民警には逮捕権がなく、警官が同行していないと発砲できないなど、リアルな制約を設けて、物語に緊張感を与えています。
地味ではありますがよく考えられた作品で、つくり話を楽しむための要素がたっぷりと詰め込まれた、注目作と言えると思います。

2004.6