銀翼の魔戦鎧(ゼーラ=ヴィット)

(早矢塚かつや/一迅社文庫)

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Story

まともな稼ぎのない甲斐性なし、アスト=オルドビスは「災厄の魔法使い」が完成させたという新型の魔法鎧を盗み出す仕事に関わることになる。
しかし計画はわずかに齟齬を来し、アストは魔法使いの弟子である少女・ウィスティアリア=レイラインと旅に出ることになる。さらに旅先ではサーカスの少女・ルッカと知り合うことになり……
剣と魔法と旅とお色気が交錯し、魔戦鎧が地を駆けるライトファンタジー。 

Impression

剣と魔法のファンタジー・アドヴェンチャー!
当サイトには珍しい、ど真ん中のファンタジー作品の紹介です。
なんでこんな本を買ったかといいますと、絵師買いです。文句あるか。
まぁ、そんなわけで水月悠さんの絵だけ堪能できればいいやと、たいした期待もせずに軽い気持ちでページを開いたこの作品でしたが。
なかなか面白いじゃないの。
シチュエーションや設定の説明にページを割くことはせず(ぶっちゃけどっかで見たようなありがちなシチュ)、いきなり火力たっぷりのアクションでスタート。
文章はリニアな感じでさくさく進みますし、アクションもふんだんですし、女のコは清純派、お色気担当、妹と揃ってますし、ファンタジーの世界観はディテールを最小限に抑えつつもムードありますし、ちょっとこそばゆいラブコメ風味も漂っていますし、お色気シーンも備えてますし!(←重要)
しばらく日常系ラノベばかり読んでいた身には、「あれ? ファンタジーってこんなにスムーズに読めて、面白かったっけ?」と再認識させられる作品でした。
もちろん金属質な透明感が印象的な、水月悠さんの挿絵もナイスなインパクト。自他ともに認める黒髪萌えの私が、「き、金髪もいいよね?」とか血迷っちゃうくらいにナイスなのです。
ライトファンタジーの基本要素がすべて入った、幕の内弁当(竹)みたいな、お値打ち感あるライトノベルです。

Wistiaria Leyline

名前の綴りはテキトー。
陽光を梳いたかのような金髪と赤い瞳、そして包容力抜群の巨乳がトレードマークの、本編のヒロイン、ウィスティアリア=レイライン、通称アリアちゃんです。
「金月の魔法使い」の異名をもつ魔法使いであり、純白の魔戦鎧「アリアンロッド」を纏う少女戦士。う〜ん、華やかですねぇ。ファンタジーですねぇ。
しかし、彼女の魅力は「災厄の魔法使い」に見込まれた魔法の才でも、白亜の魔戦鎧をまとった凛々しさでもなく。
ちょっとしたことでヤキモチを焼いてしまう、ちょっと独占欲の強い女のコらしさだったりするんですね〜。
恋敵・ルッカと仲良くしているアストを見て、羽根ペンをポキッと折っちゃったり、酔った拍子にルッカに負けじとアストに抱きついちゃったり、あげくはジェラシーが原因でピンチに巻き込まれちゃったり。そんな女心全開なところがなんともいじらしく、読んでて身悶えせずにはいられないんですよ! ふだんが物分かりのいい優等生、清純派のヒロインという感じなだけに、そのギャップがかわいらしく思えてくるんですよね〜。
恋にも魔法にも一本気な正統派のヒロイン。
ヒロインはやっぱ、こうじゃなっきゃいけませんよね〜♪

Character

主人公・アストの妹がピーチェ=オルドビスちゃん。「お兄ちゃん大好き!」な、いかにもな妹キャラですねぇ。アストに甘えるしぐさを見せたかと思うと、アストとアリアの仲を取り持とうとしたりもして、その絶妙な距離感がいいのですね。
一方では凄腕の魔鋼技師として、物語のキャスティングボードを握る役割でも活躍。なにげに存在感抜群の妹ちゃんなのです。
アリアのライヴァルといえるのが、旅芸人一座の踊り子、褐色の肌がトレードマークのルッカ=ラウレルちゃん。当作品のお色気担当ですねぇ〜。
おくてというか鈍感というか天然というかなアリアちゃんに対し、こちらは積極的に肉弾戦を展開。当作品のラブコメパートをグイグイと引っ張ってくれるキャラなのです。
その行動原理は、いかにもこの世界観に相応しいもの。ファンタジーのムードを盛り上げてくれるサブヒロインです。 

Guide

難しい設定を抜きにしたライトなファンタジー。ファンタジーアレルギーの気がある私でもするする読めた、実にとっつきやすい作品です。
その分逆に、ファンタジーらしいこってり感を求める方には物足りないでしょうね。

2014.4


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