(平坂読/MF文庫J)
ハーフの少年・羽瀬川小鷹は、そのナチュラルにヤンキーじみた風貌とぶっきらぼうな性格から、学校で浮いている存在。
彼はある日、同じようにクラスで浮いている少女・三日月夜空がひとり楽しそうにしゃべっているところを目撃する。不審に思った小鷹が訊ねると、夜空は「エア友達」と話していたと、突拍子もないことを話し出し……やがてふたりは友達作りを目的とした部活、「隣人部」を作ることになる。
「隣人部」には次から次へと、友達の少ないアレな少年少女がやって来て……
なんつータイトルだ。
前作「ラノベ部」が面白かった、というのもありますが、あまりにインパクトフル、かつストレートなタイトルに、思わず手に取っちゃいましたよ、この本。
手に取った瞬間に、「僕も友達が少ないんですッッッ!」と満天下に告白した結果になっちゃってるような気がしないでもないんですが。
エロマンガをレジに持ってくより、このラノベをレジに持ってく方が恥ずかしいような気もするんですが。
結婚式のとき、呼ぶ友達が全然いなくて困った、ってーくらい友達がいないのは事実なので開き直って、レジに持っていきましたよ。
ストーリーの方は、タイトル通り、友達の少ない連中が、悪戦苦闘しつつ友達を作っていく物語なんですが。
もちろん「中学生日記」のようなジャンボリーさで友達が順調に増えていく、なんてことなどあるわけもなく。
主人公・小鷹は無言で、あるいは笑顔で周囲を威圧しまくるし。
夜空は性格がアレで、見た者を片っ端から面罵するし。
星奈も性格がアレで、見た者に片っ端から高圧的な態度をとるし。
幸村はさらにアレだし。小鳩はかなりアレな方向に飛んじゃってる感じだし。
完全にアレなキャラクター揃いで、会話がかみ合わないことかみ合わないこと。読んでると何度も、「お前ら本気で友達作る気あんのかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」と叫びながら、本をベランダからケフェウス座方向に向けて投げ捨てたくなってしまいます。
が。
それでも読み続けてしまうのは、その個性的すぎるキャラ同士のかみ合わない掛け合いが、ハイテンションで面白いからなんですね〜。
そのかみ合わなさと、テンションの高さは、まるで居酒屋で気の置けない仲間と、延々ぐだぐだ話しているような感じで、その陶酔的なリズム感に、知らず知らずにハマっちゃうんですよね〜。
アレなヤツら揃いだけど、それでもこの雰囲気の中に浸りたいと思ってしまう、独特の居心地のよさを持ったトークバトルコメディです。
魅力的かつ残念な女のコがずらっと揃った作品ですが、まずはメインヒロイン(多分)の三日月夜空ちゃんから。
口絵の部員紹介に曰く。「容姿以外は色々と残念。友達が少ない。」。
この言葉が全てを表しちゃってますね〜。
藍色がかった黒髪と、きつめの目許が魅力的なスレンダー美少女。
でありながら、「エア友達」と会話を楽しんでしまう残念な部分を持ち合わせたり、友達を作るために「隣人部」なんて部活動をでっち上げてしまう残念な行動力を持ってたりで、口を開けば出てくるのは、「リア充は死ね!」「人を殺すときだけ生きていると実感できる!」「ヒロインがレイプされるなど娯楽の基本ではないか」など、ラノベのヒロインとして、美少女としてそれはどうよ、というセリフばかり。
もっとも得意としているのは他人を陥れること。という、思わず感嘆のため息をもらしてしまうくらいの性格破綻者ぶりがなんともステキです。
続いては柏崎星奈ちゃん。
こちらも口絵の部員紹介に曰く。「性格以外はパーフェクト。友達が少ない。」。
という、残念系美少女なのです。
頭脳明晰スポーツ万能容姿端麗で、当然男子には大人気。だけど同性の友達は少ない、という女のコ。
まぁ同性の友達が少ないも何も、「踏んであげるから跪きなさい。それとも靴舐める?」と真顔で言ってしまう、人間としてかなりアレな性格では友達が出来るはずもないんですがね〜。
策略家ぶりと性格の酷さでは一枚も二枚も上の夜空に軽くあしらわれ、さくっとハメられるのが役どころ。
そこがおいしい、不思議なポジションの美少女です。
まだまだいるぞ、残念美少女、と言ったところで次に登場は楠幸村くん。
すいません、美少女じゃないです。くん付けで記した通り、戦国武将を彷彿とさせる名前の通り、立派なおとこの娘です(←立派か?)。
しかし、部室にいるときのデフォルトはいつもメイド服。しかし無表情。行動はエキセントリックと、つかみどころのなさでは浜名湖のウナギも泣いて逃げ出すようなキャラクター。
文章だけでは物足りない、ぜひアニメ化していただいて、画面でそのおとこの娘っぷりを確かめてみたい男のコです。
黒髪で白衣でマッドでサイエンティストでメガネっ娘なのが、志熊理科ちゃん。
しかし彼女の本領はそのルックスにあるのではなく……なんでもエロ方向に結びつける方向に特化された、桃色の脳細胞。
メカ×メカのやおい同人誌が大好物という、かなり特殊な方向に特化した、シュールストレミングもびっくりの腐女子っぷりもまた天晴。
個人的にこの作品で一番お気に入りなのは理科ちゃんですが、別に黒髪だからとか、後輩だからという理由じゃありません。
単にハイテンションで面白すぎるから、という理由です。
言動が目を覆うばかりに痛々しい邪気眼妹・羽瀬川小鳩ちゃんに、騙され易すぎるちびっこシスター・高山マリア先生と、ろりキャラ方面も残念すぎるツートップ態勢で磐石!
まぁ……残念すぎて、萌え度としてどうかという気がしないでもないですけどねぇ……(遠い目)
ストーリーよりも、キャラクターとネタそして勢いに特化したような作品。
ライトノベルという括りの中でも、「ノベル」として読むには食い足りなさを感じる作品ですね。夜空と星奈のやりとりを中心にした、リズム感たっぷりのトークと、オタクネタを楽しむ作品。
1話1話のヴォリュームが小さいので、気楽に楽しめる作品です。
2009.6