はてな☆イリュージョン

(松智洋/ダッシュエックス文庫)

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Story

田舎から上京してきた少年・不知火真は、両親の知り合いである大奇術師・星里衛の家に住み込みで弟子入りすることになる。
衛の娘でで幼なじみの果菜と再会した真は、美しく成長した彼女に熱烈な歓迎を受けたが、あることがきっかけで彼女の態度は豹変してしまう。
首都を騒がす怪盗、衛のイリュージョン、星里家が守ろうとするもの。果菜と仲直りしたいと願う真は、それによってさらなる秘密に足を踏み入れることになるのだった。

Impression

「ダッシュエックス文庫」創刊のフラッグシップ的作品として、平台でも目立っていた一冊。
しかもヒロインは黒髪の女子中学生。
マジック、怪盗、洋館には執事とメイド。個人的には「キャッツ・アイ」とか「B−ウォンテッド!」を思い浮かべましたが、なんとも男のコのハートをわくわくさせてくれるシチュエーションが詰まっていて、作者はヒットメーカー・松智洋、挿絵は神絵師・矢吹健太郎。まさに集英社の総力を結集したようなラインアップで、はい、即座にレジに持っていきましたです。
読んでみれば、ナカミはしっかり期待通り。
なんといってもドジっ娘属性とツンデレ属性を装備した黒髪ヒロイン・はてなちゃんが思いっきりツボですし、脇を固める完璧すぎて残念な方向に進化しちゃったメイドのエマさん、守ってあげたい系金髪幼女・夢未ちゃんも魅力的。
ストーリーそのものは先が見えちゃう部分も多いですし、ライトノベルにしては活字多いなぁ〜、というところもあるんですが、テンポのいい文章と、魅力的なキャラクターのおかげで全くそんなことは感じられません。
もちろん、インパクト絶大、萌え度フルスロットルなイラストも期待通り。
心が浮き立つラブコメ怪盗活劇のはじまりです。

Kana Hoshisato

黒髪美少女強気系、ツボです。個人的にツボすぎます、本編のヒロインが星里果菜ちゃん。ここはニックネームの「はてな」ちゃんと呼びたいですね。
いやぁ〜、初登場のシーンで胸がときめき、真との再会シーンでハートを持ってかれちゃいました。
黒髪美少女だというだけでも魅力的だというのに、ドジっ娘属性だとか、徹しきれていないツンデレ風味だとか、ガードの甘さだとか、怪盗少女だとか、ふくらみかけのボディだとか!
いろいろと萌え要素が多すぎて、そのひぐさ、行動のひとつにいちいちときめいてしまいます。
その行動の底にあるのは、お母さんのようになりたい、近づきたい、お母さんを助けられるようになりたいという、オトナへの憧れ。それが少女らしいひたむきさと危なっかしさに繋がっていて、はらはらしながら見守ってしまう、そんな感じになってしまうのですね。
読み手をいろんな意味でどきどきさせる、玉手箱のような女のコ。その活躍に、目が離せなくなってしまいます。

Character

魅力的なキャラクターははてなちゃんだけじゃないぞ!
という感じで、脇役陣も個性派揃い。そんな中で目立っているのは、メイドにして生徒会執行部役員の桜井エマさんですね〜。
凛とした雰囲気に、十字のヘアアクセとメガネがトレードマークのパーフェクト・メイド。なんですが、常識というか感覚というかが秋葉原方面ときどき池袋方面にズレていて、結局残念な印象しか残らないという、なんとも面白いお姉さんです。しかしこのパーフェクトさで中学生ってのはさすがに無理があるよなぁ……(苦笑)。
はてなちゃんの妹が、金髪美幼女の星里夢未ちゃん。サイバー方面に才能を発揮するクールな美少女です。表情に乏しく、ヒキコモリ風味の夢未ちゃんが、真だけには心を開いているというシチュエーション。萌えますよね? 魂揺さぶられますよね? 保護欲そそられまくっちゃいますよね? 真に軽〜く嫉妬を感じちゃいますよね? それでいいんです。それが夢未ちゃんの魅力です。
作品をいい意味で引っかき回してくれるエンジン役が桔梗院心美ちゃん。お嬢様のような苗字、お嬢様のようなスペックですが、好奇心の赴くままに星里家を引っかき回す様は、まるでいたずらな仔猫。はてなちゃんとはベクトルの違う強気さが、うまくはてなちゃんとかみ合って、これはこれでいいコンビになっています。今後のストーリーでも鍵を握りそうな、気になる存在です。

Guide

ライトノベルレーベルから出ているれっきとしたライトノベルなんですが、地の文が長く、みっちり詰められた文字は小説的。
小説と思って読むと中身のイージーさが気になりそうですし、ライトノベルと思って読むと活字の多さにちょっと驚きそうな、中間的な雰囲気のある作品ですね。

2015.1


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