（松智洋／ダッシュエックス文庫）
田舎から上京してきた少年・不知火真は、両親の知り合いである大奇術師・星里衛の家に住み込みで弟子入りすることになる。
衛の娘でで幼なじみの果菜と再会した真は、美しく成長した彼女に熱烈な歓迎を受けたが、あることがきっかけで彼女の態度は豹変してしまう。
首都を騒がす怪盗、衛のイリュージョン、星里家が守ろうとするもの。果菜と仲直りしたいと願う真は、それによってさらなる秘密に足を踏み入れることになるのだった。
ハイテンションモードにも書いた通り、著者と挿絵にヒットメーカーをタンデムで揃えた、ダッシュエックス文庫創刊のフラッグシップ的な作品。
ダッシュエックス文庫の前身・スーパーダッシュ文庫創刊時の旗艦作だった「Ｒ．Ｏ．Ｄ」をここで紹介した人間としては、若干複雑な気持ちにならないでもないですが（苦笑）、新レーベルの船出に相応しい佳作だと思います。
怪盗、奇術、幽霊屋敷にメイドと執事、幼なじみに金髪美少女、とにかくラノベ読者がピンと来そうな要素をこれでもかと、あざといまでに詰め込んだ作品ですが、地に足のついた設定と、手堅い文章で手際よくまとめられていて、読みにくいところも、逆にダレてしまうようなところもないのは見事です。
ストーリーは先が見えてしまうところも多く、厚みに欠ける感はありますが、個人的にはラノベには大仕掛けなどんでん返しやディテール、ストーリーの深みより、さくさくしたテンポのいい読み心地と、キャラクターの魅力を求めていますので、問題なし。肌色成分多めな挿絵を含めて、読者をテンポよく引っ張っていく要素がふんだんに盛り込まれていて、まったく飽きません。
読み応えと読みやすさを兼備した、楽しみな新シリーズです。
２０１５．１