(葵せきな/富士見書房富士見ファンタジア文庫)
美少女だけが集まる碧陽学園生徒会。
そこに成績優良枠で入って来た杉崎鍵は、その初日にいきなり、「皆好きです。超好きです。皆付き合って。絶対幸せにしてやるから」と、とんでもない告白(?)をする。
当然4人の美少女たちの反応は冷たかったのだが……
ほぼ全編が生徒会内で繰り広げられる、ユルくてハイテな爆笑学園ライトノベル。
ギャルゲをやってたりすると、クライマックスの感涙必至の深いエピソードも、あるいはムードたっぷりの恋愛展開もいいけど、冒頭の共通パートのかけあいが一番面白かったな〜、なんてことはありませんか?
あるいはラノベを読んでて、終盤の熱くダイナミックなバトルもいいし、中盤、主人公とヒロインがくっつきそうでくっつかないとこがやきもき出来ていいんだけど、やっぱり冒頭の主人公とヒロインのやりとりがたまらないんだよな〜、なんてことはありませんか?
そんな人にオススメなのがこの作品。
一冊丸ごとかけあいのオールコメディ作品。まったりとした生徒会室で繰り広げられる、ボケとツッコミの応酬を読んでいるだけで頬が限界まで弛緩し、腹筋が許す限り爆笑してしまう奇跡のライトノベル。
それがこの碧陽学園生徒会シリーズ「生徒会の一存」なのです!
主人公の鍵は生徒会に入るやいなやハーレムルートを目指すと宣言し、日夜くりむ会長に告白し続けている軽薄系変人なんですが、迎え撃つ(?)生徒会メンバーも個性派揃い。
結果、くりむちゃんがない胸を張って強引に事を進めようとすれば、知弦ちゃんはそれをクールにサポートする……ことなく突き放してくりむちゃんをいたぶり、鍵は己の欲望にひたすら邁進し、深夏ちゃんがひたすら暴力系ハイテンションモードで爆走し、片や妹の真冬ちゃんは妄想系ハイテンションモードでやっぱり爆走する……という感じで、かみあってるんだかかみあってないんだか分からない会話が延々と生徒会室で繰り広げられるのです。
語られるテーマ自体はきわめて日常的な問題であり、読んでてシンクロ出来る部分も多いんですが、それを過剰なまでに軽妙でアップテンポなかけあいで楽しませてくれる好作品。
コメディ好きなら必読の注目作です。
いつも何事かの格言を叫び、ちっちゃい身体を背伸びして、ない胸を張って登場するツンデレ生徒会長、それが桜野くりむちゃん。
何かの取り柄があるわけでもなく、成績が優秀というわけでもなく、性格はといえばひたすらワガママで自堕落で負けず嫌い。何で生徒会長やってるかっていうと、そのかわいさ故に人気投票で選ばれたから。
というなかなか処置に困るちびっ子なんですが、どんなわがままもくりむちゃんがすると、チャームポイントに見えてくるから不思議ですね〜。
何かにつけてみんなにからかわれるいじられキャラっぷりとか、どんなに背伸びをしても舌戦では他の生徒会メンバーにかなわない脆さとか、Hなことは苦手で話題がそっちの方に向かうとすぐあたふたしてしまう純情さとか、怖いハナシが苦手なとことか、そういうかわいいところがいっぱいあって、欠点も含めて、憎めない妹分みたいな感じがちっちゃい身体から滲み出してて……そこがいいんですよね〜。
もちろん生徒会長という役割を全うすべく、誰よりも生徒のことを考え、学園をよくして行こうというひたむきさも魅力。
こんな生徒会長がいる学園は絶対、幸せですよね〜。
碧陽学園生徒会の美少女たちを続々と紹介して参りましょう!
黒髪が美しいクールビューティー、美少女というより美女という形容が似合うのがユアハイネスこと紅葉知弦ちゃん。
頼りないくりむ会長に代わって、生徒会を影から支配するステキな書記。
比較的寡黙なキャラですが、時折鋭すぎるツッコミを入れたり、華麗な無視で場の空気を氷点下に下げたりと、巧みに場を支配するテンションメーカー。
こんな女性に足蹴にされたい! と思わずに入られない、オトナ〜なムードを持った女性です。
クールな書記に対し、ホットな副会長が椎名深夏ちゃん。ボーイッシュな口調でダイレクトにツッコミを入れてくるクラスメイト。うむうむ、これもなかなかツボですよ。基本的にインドア系のキャラが揃ったこの生徒会の中で、貴重な体力系キャラ。体力系というより、若干バイオレンスに走ってるような気がしないでもないですが、そのへんもまたチャームポイントですね。
深夏ちゃんの妹が会計の椎名真冬ちゃん。真冬という名に相応しい病弱っぷりと、自分のことを名前で呼んじゃう子供っぽさがたまらなく、もうただひたすらに読み手の保護欲をぐりぐりと抉ってくる反則キャラ。
深夏ちゃんと対照的に儚げな印象の女のコでありながら、時に的確に、あるいは容赦なく鍵やくりむちゃんの弱点を抉って再起不能に陥れる、なかなかあなどれない美少女です。
正確には「碧陽学園生徒会議事録」というタイトルがついているこのシリーズ。2008年7月15日現在では「生徒会の一存」「生徒会の二心」がリリースされ、「生徒会の三振」が予告されています。
とにかく笑いを追求したノリのいい作品で、ライトノベルにコメディ性を求める人には絶好のチョイスと言えるでしょう。
お笑い度が高いため、公衆の面前で読むのは危険。ひとり部屋で泥酔しながら、頭を空っぽにしながら笑うのが正解です。
2008.7