(有沢まみず/電撃文庫)
犬神遣いの血を引く少年、川平啓太。しかし、彼はなぜか自らに仕える犬神を得ることが出来ず、一族より勘当されていた。
そんな彼の許に現れた犬神の少女、ようこ。
性格従順、容姿端麗、ふたつの妖術を操る彼女は啓太と主従の契りを結ぶが・・・
山を下りたようこは啓太の支配を逃れ、やりたい放題の連発。啓太の家にやって来ても、その無邪気な言動で啓太を翻弄し、思うがままに振る舞うのだった。
それでもとりあえず始まった、落ちこぼれ犬神遣いと、わがまま犬神少女の共同生活。
そこには当然の如くさらなるトラブルが舞い込んで来て・・・
ちょっとH。
このハイテンションコメディを一言で表すとしたら、この言葉しかありません。
小悪魔の中の小悪魔、という感じのいたずら美少女・ようこと、スケベ健全な男子高校生・啓太がひとつ屋根の下に住むことによって起こる、どきどきのエピソードがいい感じな、楽しい作品です。
いや、一応犬神のようこが「じゃえん」と「しゅくち」を駆使して魔物を倒す退魔ものとしての側面もあるんですが(っつーかストーリー的にはそっちが本線なんですが)、やはりそのハイテンションなコメディ要素の方が目立っちゃいますねー。言わば、ちょっとH系コメディ一点豪華主義。札幌の大衆食堂「激盛りの店・ジャンヌ」の激盛カツ丼もかくやという圧倒感で、これでもかこれでもかと、こそばゆく甘露な笑いを提供してくれます。
おっと、忘れちゃいけないのは若月神無さんのかわい〜いイラスト。少女マンガのような細い線で、Tシャツはだけたようことか、下着姿のようことか、曲線感抜群のイラストを書いてくれまして、萌え度こそばゆ度ちょっとH度いずれも80%増。
存分に萌えて、存分に笑い転げられる、アタマを空にしてわくわくできる、そんなスーパーライトコメディです。
無邪気でわがままなトラブルメーカー。
世間知らずのように見えて、ころっと啓太を手玉にとって見せる、したたかな小悪魔っぷり。
牙と爪を立てながら、しっぽを振ってるよーなかわいい犬神。
これは啓太ならずともころりと参っちゃう、最高の愛らしさですよね〜。いやもう、陥落。全面降伏なのです〜♪
火焔の術「じゃえん」と、物質移動術「しゅくち」を駆使して、さまざまな事件を解決するスーパーヒロインとしての一面もあるんですが、やっぱりそこはあくまで一面でして。
「うおぉー、かっこいー!こんな犬神と一緒に闘いてぇ!燃えー!」
などと読者に思わせることはほぼ一切なく、
「うおぉー、かぁぁぁいぃぃぃ〜。こんな犬神と一緒に暮らしてぇ〜。つーか、絶対一緒に暮らしてたら理性無くす。瞬時に消える。絶対保証。萌え〜♪」
と読者に邪な野望を燃え上がらせる、そんなヒロインです。
いや、もう、ページをめくるたびにようこちゃんのちょいセクシーで、健康的で、それでいて小悪魔的な魅力の前に鼻息が荒くなっちゃうこと確実。
もう、ころっと参っちゃいますよぉ〜。
超爆萌えコメディ小説「いぬかみっ!」ですから、萌え萌え〜♪なヒロインがようこひとりで収まろうはずがありません。
2巻から登場するのは割烹着が似合うおしとやかな犬神・なでしこちゃん。まさに大和撫子ここにあり!という彼女の甲斐甲斐しさに、ようこちゃんよりなでしこちゃんにハマってしまう人も多いのでは。そして、「こんな犬神がウチにもほしーなー。オレ、生まれ変わったら絶対に犬神使いになっちゃるけんのぅ」と、夜空を睨みながら拳を固く握っちゃう方も大勢いることでしょう。
ろり萌えなあなたにはこちらも2巻から登場、ツインテールちびっこ犬神・ともはねちゃんがオススメ。無邪気で。負けん気が強くて。いっしょうけんめいで。そんなろり萌え諸兄の心を滾らせるような性格を標準装備。さらに、悪気はないのに騒ぎをでかくして、だけどなんだか憎めない、そんなところもぐぅですね。
せんだんをはじめ、今後もいろんな美少女犬神が登場しそうで、期待大、です。
一応退魔ものというストーリーラインはありますが、ノリはお馬鹿でちょっとH。やや下品なネタが多く、ノリ重視の作品なので、マトモに小説を「読みたい」方には不向きでしょうね。好みが別れる作品だと思います。
ただ、ストーリーの流れははっきりしており、テンポもいいので楽しめる人はかなり楽しめるのでは。シリアスとコメディの振幅がいいメリハリになっており、まったく飽きることがありません。
2003.8