(有沢まみず/電撃文庫)
犬神遣いの血を引く少年、川平啓太。しかし、彼はなぜか自らに仕える犬神を得ることが出来ず、一族より勘当されていた。
そんな彼の許に現れた犬神の少女、ようこ。
性格従順、容姿端麗、ふたつの妖術を操る彼女は啓太と主従の契りを結ぶが・・・
山を下りたようこは啓太の支配を逃れ、やりたい放題の連発。啓太の家にやって来ても、その無邪気な言動で啓太を翻弄し、思うがままに振る舞うのだった。
それでもとりあえず始まった、落ちこぼれ犬神遣いと、わがまま犬神少女の共同生活。
そこには当然の如くさらなるトラブルが舞い込んで来て・・・
ちょっとH系のコメディ作品です。
ストーリーとしては、犬神使いの少年が、自らの能力と、犬神の「ようこ」の力で、あらゆる魔物を倒す話ではあるのですが、スケベな犬神使いの少年・啓太と、わがままでパワフルな犬神の美少女「ようこ」のコミカルなかけあいにページが割かれており、ファンタジーの舞台を借りたコメディ、として読むべきでしょう。
有沢さんの軽く、独特のリズム感を持った文体に、あっけらかんとした「ちょっとH」系のコメディ要素がマッチ。深いことを考えず、軽く読み進めるには絶好のライト感があります。
一方で、ようこの使える術を「じゃえん」と「しゅくち」に限定して緊張感を持たせたり、ようこの正体に含みを持たせたり、仮名史郎や、2巻で初登場する薫と10匹の犬神たちのようなミステリアスで味のある脇役を用意したりと、小細工もしっかりされていて、いろいろ楽しみなところも感じられるシリーズになっています。
2003.8