キノの旅〜the beautiful world〜

(時雨沢恵一/電撃文庫)

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この作品は「浅木原書店」の浅木原忍さんに紹介していただきました。

Story

中性的な少女、キノと、彼女の駆るモトラド(人語を操るオートバイのようなもの)・エルメスとの旅物語。
キノは荒野をあてもなくさまよいながら、時折あらわれる国を訪れる。いずれもが外界と隔てる壁を持ったその国々は、独自の道徳と習慣を持っており、キノを時に困惑させ、あるいは彼女と対立する。
三日後。キノは国を後にし、ふたたび旅に出る。その時、それらの国々は彼女の心に何を残し、キノはそれらの国々にどんな波紋を投げかけたのか。
そして、キノが旅の果てに何を見つけ出すのか。
メッセージ性の強い、人気短編集。

Impression

ファーストインプレッションとしては以前ここで紹介した「水域」や、「人形式さそり座」で紹介している「ヨコハマ買い出し紀行」に似てるな〜、というのがありました。
現代日本の印象を僅かに残しながら、大きくその文明度を失った世界と、それゆえに漂うやるせないノスタルジア。主人公とゲストキャラクターの「異文化交流」とも言える出会い、その融合と相剋。主人公にシンクロすることなく、突き放したように注がれた視線。
だから、いきなりぐいっとストーリーに引き込まれることはなく、「ま、短編だし。本も薄いし。でも、世界観にはなじめるから、ちょっと読んだろか」みたいな感じでさくさく読んでいって。
乾いた文体で描かれた旅物語を読んでいく果てに得られたのは、心温まるような安堵感だったり、行き場のないやるせなさだったり、腕を組んで考えさせられるような自問だったり。
乾いているがゆえに、読み手のウェットな感情を揺り動かして自噴させる、そんな作品です。見た目の軽さに似合わない確かな手応え。こういう本が一冊本棚に挟まっている、それはちょっとした充実だと思います。

Charactor

びぜんやのストライクゾーンど真ん中、黒髪ショートカットのヒロインがキノ。ヒロインというよりは中性的な印象の“主人公”といった感じなので、「萌え〜っ」ってな感じはないんですが、ドライで、すべてを突き放したようなキャラクターが作品世界にハマってて、読み手を旅心をかきたてるような印象がある好キャラですね。。
もうひとり(?)のメインキャラクターがモトラドのエルメス。こちらも淡々としたキャラクターですが、おしゃべりでトボけた感じ。乾いた作品世界の中に流れる、一筋の小川のようなキャラクターです。

Series

実は私も第3集までしか読んでないのですが・・・
とりあえず、これまでに6集が刊行されています。アニメ化されるようなので、これからはちょっと大きな書店なら平台に6巻並び、というのも多くなるのではないでしょうか。

Guide

淡々としたストーリー、短編集という形式、ライトノベルとしてはあっさりしたカバーデザイン、繰り返し読みたくなるような、適度なインパクトとメッセージ性。つまみ読みにはぴったりですね。
ポケットに入れて持ち歩き、車内で、喫茶店で、待ち合わせで、空いた時間に読む。そんな、文庫スタイルの読み方が正解。
シチュエーションが独特ですし、青年向け小説らしく、地しぶき飛び散るようなキツめの描写や、読者の価値観を試すようなストーリー運びもあるので、見た目以上にゴツさを感じる人もいるかもしれませんが・・・

2002.11


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