R.O.D

(倉田英之・スタジオオルフェ/集英社スーパーダッシュ文庫)

ノーマルモードへ

Story

東京、御台場。廃ビル。
稀覯本「黒の童話集」の取引に訪れたふたりの男の取引相手は、金髪の軽薄そうな男と、無骨な眼鏡をかけた東洋人の女。
決裂した取引。
ふたりはその女、読子“ザ・ペーパー”リードマンの技の前に翻弄され、圧倒的な敗北を喫する。彼女の美しい「紙技」の前に。
そして読子が次に遭遇した敵は若き天才作家・菫川ねねねを狙う、ストーカーまがいの人物だった。

Impression

銃身を両断する紙片!敵を一撃のもとに倒す紙飛行機!銃弾を受け止めるページ!常識を外れた攻防の全てを「それが紙使いの能力である」のひとことで片づけてくれる、そこが痛快なスピーディーなアクション小説です。
あらゆる紙を武器として操る主人公は、白衣と眼鏡という、考えようによってはマッドサイエンティストの制服のような衣装に身を包んだ、大英図書館のエージェント!
それも緑の黒髪を腰まで伸ばし、厚い眼鏡の奥にちょっと垂れ気味の目を、白衣の下に意外に豊満なボディを隠した日本人と英国人のハーフ!
その名も!
読子・リードマン、25歳。コード・ネーム「ザ・ペーパー」!!!!!
ってなわけで気になるでしょ?とにかく楽しい要素がたっぷり詰まった痛快なアクション小説です。
シチュエーション、キャラクターが上質なら、その世界に読者を誘うストーリーもまた上質。流れるような文体に載せられたストーリーは、導入部からクライマックスまでなめらかに盛り上がっていく感じで、一度開くとなかなか本を閉じる事が出来ない、最高の引力を発揮してくれます。
さあ、あなたもページを開いて本と戦いの密林へ!

Character

はう〜、読子とねねね、どっちのキャラクターも魅力的ですねぇ。こりゃどっちも紹介するしかないでしょう!うん。
てなわけで、まずは読子
ザ・ペーパーとして数々の難敵を倒す読子もいいですし、それこそがこの作品の真骨頂ですが、その裏表紙とも言える、ちょっと情けない読子先生モードもまた、いいんですよねー。
とにかく本が好きで、「本が好き。死ぬほど好き。」という冒頭の一節が全く誇大表現じゃないと言いきれるほどの偏書狂。赴任のあいさつで書評始めちゃうし、好きな作家(ねねねのことね)を追いかけて授業すっぽかしちゃうし、そのぶっ飛びっぷりが愉快で、活字中毒者にとってはかなり痛快です。
そんな性格の上に服装は着たきりのコートだし、分厚い眼鏡はかけてるし・・・で、女性的魅力には欠けそうなんですが、肌身はなさぬ丁寧語と、相手を思う真摯な優しさが胸を打つポイント。羽音たらくさんのイラストとの相乗効果で、魅力的なキャラクターになってます。
で、ねねね
ショートカット元気系!しかも現役女子高生作家!こりゃもう、
「よっしゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
てな感じに魅力的ですね。こちらも羽音たらくさんの描くねねねが相乗効果でナイス!制服に包まれた健康的な胸のラインと、ミニスカートから伸びた脚の線が健康美!という感じでいいですね。プラス作家らしい好奇心がデフォルトでセットされてるんだから、その行動から目を離せません。
創作の事になると人格変わるあたりがまた、ぐぅ。独り暮らしで創作のために全てを捨てた孤独さと、普通の女子高生としての心理と、読子ほどの二面性はありませんが、二重三重に重なった心理が微妙な乙女心を創り出していて、守ってあげたくなるような危うさを作っているんですよねー。
このふたりに夢中にならなくてどうする!という、素敵なコンビです。

Series

現在のところ刊行は2巻まで。
2巻の方は登場人物紹介の要素がウェートを占めていた前作と違って、長編として一本通ったストーリー。開店直後の巨大書店をテロリストが占拠、そこに読子が挑むというアクション度満点のストーリーになっています。スペクタクル感はこっちが上。1巻を読んで気に入ったら、迷わず買い、の満足度の高い作品です。

Guide

紙を武器に闘う、という点にまったく理論的、科学的説明は加えられてませんので、その辺をばかばかしいと思うか、痛快!と感じるかが分かれ道ですね。
また、これは好みの問題もありますが、萌え要素は意外と薄いかも。あくまでストーリーの流れ重視、という感じの雰囲気がありますね。
軽いノリの作品なので、お酒でも片手に、軽く暇つぶし感覚で読むのがいいような気がします。


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