(倉田英之・スタジオオルフェ/集英社スーパーダッシュ文庫)
東京、御台場。廃ビル。
稀覯本「黒の童話集」の取引に訪れたふたりの男の取引相手は、金髪の軽薄そうな男と、無骨な眼鏡をかけた東洋人の女。
決裂した取引。
ふたりはその女、読子“ザ・ペーパー”リードマンの技の前に翻弄され、圧倒的な敗北を喫する。彼女の美しい「紙技」の前に。
そして読子が次に遭遇した敵は若き天才作家・菫川ねねねを狙う、ストーカーまがいの人物だった。
主人公に偏書狂を据え、活字中毒者にアピールする、楽しい活字活劇です。
紙で火器と渡り合うという、荒唐無稽な設定がこの作品のポイント。柔よく剛を制するという感じの、アイディアとけれん味に満ちたアクションシーンの連続で、設定をうまく生かしきった、満足できるストーリーになっています。
このテの作品にはお約束とも言える「普段は頼り無いがいざとなるとスーパーマン」的な主人公、読子と、若い読者層にアピール度の高い元気少女タイプのねねねを、ダブルメインとしながら、必要以上にキャラを立てず、心理描写を極力抑えてクールなムードを作っているのも特徴。ストーリーを導く文章はリズミカルでリリカルでありながら、キャラクターを適度に突き放して、映画を見るような映像感があります。
エンターテインメントとして必要な要素をすべて満たしながら、さらにエッセンスをプラスした感じの佳作と言えるでしょう。