(伊達将範/電撃文庫)
この作品は「PELの住処」のPELさんに紹介していただきました。
三重県津市。近郊に八百比丘尼伝説が伝わる海岸の地方都市では、次々と変異が目撃されていた。
阿漕浦に流れ着いた、生きた白骨死体。絶えることない濃霧。客死した雑誌記者の遺骸から発見された謎のブーメラン。巨大な影。
その街にやって来たのは、冴えない大学生・草刈鷲士と、美少女トレジャー・ハンター、結城美沙の親娘。鷲士が波打ち際に倒れていた少女を拾って来た事から、彼らはその怪異に呑み込まれていく事になる。
最初は三重県津市という地味な街で起こった事件。
それが市街戦になったり、『トレジャーハンター』が出て来たり、八百比丘尼伝説が絡んで来たり、ナノマシーンが登場したりと、中盤以降はSF要素のてんこ盛り。
これだけ様々な要素が登場すると、作者がどうバランスを取って収拾つけていくか、ということになるところなんですが、この作品は小さくまとまることを拒否してしたのごとく、「大風呂敷を収めるならもっと大きな風呂敷で包めばいい!」とばかりに、話をエスカレートさせ、スケールアップして行きます。
最後は伊勢湾大海戦で〆。
いかにも男のコ好みの大味なSFという器に、これでもかこれでもかとネタを詰め込み、最後はチカラワザで蓋をした、ボリュームたっぷりの豪華版。
読み所が満載で、力のある本、と言う言葉がふさわしいですね。
2002.11