乃木坂春香の秘密

(五十嵐雄策/電撃文庫)

ハイテンションモードへ

Story

乃木坂春香は、「白銀の星屑」の異名を持つ、誰もが憧れる才色兼備のお嬢さま。
綾瀬裕人は平凡な毎日を送る、平凡な高校生。
クラスメイトであるという以上の接点を持たなかったふたりは、「図書館半壊事件」をきっかけに急接近する。
そして、「図書館半壊事件」のきっかけとなったお嬢さまの秘密とは……

Impression

アウトラインとしては、少年マンガ的なお約束を散りばめた、ストレートなラブコメディと言った感じで、ストーリー面での山や谷は非常に緩やかで、その分ストレスなく楽しめる作品だと思います。
この作品で特筆すべきポイントは、キャラクターバランスの見事さ。
裕人、春香の主人公カップルは受け身型のキャラですが、春香の妹・美夏を筆頭に、裕人の姉・ルコ、クラスメイトの信長など、エンジンとなる賑やかしキャラクターを多数配置し、ぐいぐいとストーリーを引っ張っていくと同時に、彼女らを縦横無尽にストーリーに絡めることで、ストーリーがどんな局面に入っても、きれいに軟着陸させることが出来る絶妙なバランス感覚が光ります。
それでいて春香の印象が埋もれておらず、ただの賑やかな群像劇になってないのも美点。美夏、椎菜というライバルの存在が、春香の存在感を引き立てるスパイスとなってる点も見逃せませんね。
ファンタジー要素がない分、ライトノベルとしてはパンチに欠ける部分がありますが、キャラクターバランスが生む軽快で自在なストーリー運びと、キャッチーな挿絵、ていねいな描写でそれをカバー。
読み応えというよりは、読んでいて心地よさを感じさせるタイプのコメディ作品です。

2008.10


top page