(五十嵐雄策/電撃文庫)
乃木坂春香は、「白銀の星屑」の異名を持つ、誰もが憧れる才色兼備のお嬢さま。
綾瀬裕人は平凡な毎日を送る、平凡な高校生。
クラスメイトであるという以上の接点を持たなかったふたりは、「図書館半壊事件」をきっかけに急接近する。
そして、「図書館半壊事件」のきっかけとなったお嬢さまの秘密とは……
それはある冬の日、手持ちの本を読み終わり何かラノベでも買おうかと思ったゲーマーズ本店でのこと。
その平台に、「ジャケ買い本ナンバーワン」と書かれたPOPとともに並べられていたのがこの本だったのです。
「荒本の赤い蠍」「3時31分のアンタレス」として、関西一円に名を轟かせるジャケ買い師だった私(←ないない)が、その挑戦を受けないわけに行きません。
いや、そう思うよりも早く、私の右手は、しゃあさんが描くふっわふわでほにゃほにゃなお嬢様・乃木坂春香ちゃんが壮絶なまでの引力を放つその文庫本を手にとっていたのです。
そしてそれを読んだ私は。
ぐはぁ、た・ま・ら・ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
と、その砂糖菓子のようにあまあまで、目もくらむほどに乙女チックなラブコメっぷりに、頬肉を限界まで弛緩させ、くふくふと声を漏らしながら萌え笑いしてしまったのです。
内容はアクションなし、アドベンチャーなし、サイエンスなし、ディテールなし、シリアスなし。
しかし、ひたすらお約束なシチュエーションを楽しみ、ドジっ娘天然お嬢様・春香ちゃんを愛でる純度100%のラブコメディに、あっという間にトリコになってしまうんですよね〜。
妙な比喩を連発して来る軽薄極まりない文体も(←原田宗典さんのエッセイを彷彿とさせて、クセになっちゃうんですよね〜)、ほわっとしたムードを加速してますますムードを盛り上げてくれます。
ストレスレスに一直線に、ただひたすら萌えと笑いの世界に読者を引っ張ってくれるドリーム・エクスプレス。
いままで多くの本をジャケ買いして来た私ですが、これほどジャケットで期待した通りの内容を提供してくれる本はなかったと断言できます。
「ジャケ買い本ナンバーワン」のキャッチコピーに寸分の狂いもない(←さすがゲーマーズ)、ジャケットに惹かれたら本編にハマること確実の作品です。
「白銀の星屑(ニュイ・エトワーレ)」「鍵盤上の姫君(ルミエール・ドゥ・クラヴィエ)」、ふたつの二つ名を持つ美少女。
ピアノを筆頭に、華道茶道はもちろん、料理や古武術まで完璧にこなすお嬢様。
可憐な容姿で、三桁の会員数がいるファンクラブがあり、そのメンバーには理事長まで!
そんなスーパーなお嬢様が本編のヒロイン・乃木坂春香ちゃんです。
完っっっっ璧なお嬢様であるにも関わらず、実はオタクでそれを隠すのに必死になってたり、意外とドジっ娘であちこちで転んでは災厄の種をぶちまけてたりというところが微笑ましくて親近感なキャラ。
加えてちょっと甘えたさんな上に、天然さんで無警戒だったり、そんなところが魅力的で蠱惑的で、読み手をドッキンドッキンさせちゃう、天然小悪魔少女なのですよね〜。
加えて言えば、そんな春香ちゃんを描くのは、オーバーキル的なふにふわ感を誇る絵師・しゃあさん。
ほわっとしていて華のある絵柄がスーパーなまでに春香ちゃんのイメージにマッチしていて、口絵を見ただけで軽く昇天してしまいます。
もちろん本編を読んで春香ちゃんのピュアさに触れれば、さらに深く昇天出来ること間違いなし!
ひとつひとつの行動を、表情を追うごとに、読み手の気持ちがふにふにふにゃふにゃととろけちゃう、ライトノベル界最強のヒロインなのです。
個人的には春香ちゃんに匹敵する萌え度を持ってると思うのが、春香ちゃんの妹にしてツインテール元気娘・乃木坂美夏ちゃん。
元気成分が有り余って迸り、春香ちゃんと裕人の仲を急接近させようと有難迷惑な奮闘ぶりを見せる、この作品のターボエンジンです。裕人を「おに〜さん」と呼んで慕って来る甘えたさんっぷりとか、妙に耳年増なところとかが妹萌えにはツボですね〜。本作のマスコットとも言える存在で、彼女が登場するだけで心がわくわくしてしまいます。
乃木坂家で縦横無尽に活躍するメイド隊の皆さんもこの作品の華。
特に美夏ちゃんに軽薄さをプラスしたようなにっこりメイド七城那波さん、クールだけど妙におちゃめなチェーンソーメイド・桜坂葉月さんは、美夏ちゃんとナイスなトリオを結成して、作品を彩ってくれます。
作品のいいスパイスとなっているのは2巻から登場の雨宮椎菜ちゃん。ショートカットのフレンドリー天真爛漫娘。う〜ん、いい娘や。いろんな意味で春香ちゃんのライバルとなる女のコで、サブキャラといいきるには惜しい存在感と萌え度を発揮してくれます。
インプレのところで書いたように、ジャケットでみた印象そのままの砂糖菓子のようなラブコメディ。平台で見て気に入ったあなたはそのままレジに直行してOKです。
ちなみに挿絵のしゃあさんが描いてる「キョウハクDOG's」とは舞台が共通しており、双方の主人公カップルが相手作品にゲスト出演してる他、由香里先生などのサブキャラも双方に登場。併せて読むとニヤリと出来ますよ。
2008.10