(高橋克彦/講談社文庫・全5巻)
平安時代の東北地方にその名を轟かせた安倍一族、藤原一族の栄華、そして朝廷との戦い、滅亡のプロセスを確かな歴史考証と、多彩なキャラクターで描いた歴史小説。
NHK大河ドラマの原作なので、ご記憶の方も多いでしょう。
第一巻から三巻までが安倍一族、四巻以降は藤原一族にスポットを当て、貴族の時代から武士の時代へ移り変わる中で、独立を守り続けた東北王国を鮮やかに描いています。
歴史小説、それも教科書に乗っている歴史の本流とは外れたところを描いた話なのでとっつきにくさは否めませんが、文達者な高橋さんの作品なので、非常に読みやすく、かつ手応えのある作品になっています。
第一部では中央から安倍側に転じた藤原経清という一種ニュートラルな存在を視点の中心に据え、第二部では半ば滅びの運命を背負った藤原一族の四代目・泰衡を主役に据えたことで、歴史にうるさい読者には新しい視点を与え、かつクールな視線で物語を作ることに成功しています。