(西澤保彦/講談社ノベルス)
さえない推理作家・保科匡緒(ほしなまさお)が外出から戻ると、無人のはずの部屋にストッパーがかけられ、中には見知らぬ男の死体が!
戸惑う保科と、警視庁の美貌警部・能解匡緒(のけ・まさお)を嘲笑うかのような、不可能とも思える密室犯罪。
解決の糸口は意外な方向からもたらされた。
事件の翌日、保科の部屋を訪れた、和服の少女・神麻嗣子(かんおみつぎこ)は事件の時、「この部屋でサイコキネシスが観測された」と保科に告げる。そして、「保科さん、わたしはあなたを“補導”します」とも・・・
SF的な趣向を取り入れた実験的なミステリーや、新感覚のコミカルミステリーを得意とする西澤保彦さんの代表作です。
この作品の特色はなんといっても、タイトル通り、「念力で密室を構成する」というミステリーの禁じ手を堂々と使いながら、それにさまざまな制約を与えることで鮮やかなパズルミステリーとしての完成度をもたせている点。ロジックという言葉そのままの、理数系の謎解きが並び、読後感は痛快さを越えて、難しいと思っていた理科や数学の問題集の答えを見せられたときのような、ある種の呆気なささえ感じてしまうほどです。
ロジック系の短編だけに、ストーリーがシンプル過ぎ、無味乾燥になる部分があるのですが、そこに超能力設定の説明役である、神麻嗣子という印象深いヒロインと、探偵役の保科匡緒、相棒の能解匡緒というふたりのステレオタイプキャラクターとのかけあいを配して、コミカルな雰囲気に仕立て上げています。
ボリュームのなさもあって、ロジックにしては読みやすい好作品です。