インフィニテイ・ゼロ

(有沢まみず/電撃文庫)

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この作品は「浅木原書店」の浅木原忍さんに紹介していただきました。

Story

冬の地方都市。
手品師の卵・リアは街の公園で、轢死した猫の死骸を抱き、語りかける不思議な少女と出会った。
腰まで伸びた栗色の髪と、鏡のような瞳をした少女、ゼロ。
リアはそこで、彼女が猫の霊を浄化する様を見る。
そして、いつしかゼロに惹かれていくリアは、心を削りながら魔を浄化するゼロの戦いを目の当たりにしていくのだった。

Impression

かなり個性的な印象のあるファンタジー作品。
読者を退かせるほどにインパクトのある、ゼロの壊れ系ヒロインとしてのファーストインプレッション、独特のリズムでセンテンスを区切った有沢さんの不協和音的文体、ドライでいまひとつシンクロしにくい主人公・リアのキャラクター。
いきなり読者に突きつけられるこの3つの要素は、読み手を不安定な気分にさせるのに十分な効果があり、インパクト絶大なのですが、この三位一体の効果こそがこの作品の肝。
ストーリー、雰囲気、キャラクター、全てがジェットコースターのように乱高下する独特のムードの中では、陳腐とも思えるシンプルなゴーストバスター・ストーリーに、思わぬ質感が生まれ、中盤を過ぎるとどっぷりとゼロのキャラクターにハマりこんでしまいます。
ストーリーとしての面白さよりも、展開の鮮やかさ、語り口の妙味、キャラクターの魅力で読者をつかむ感じの作品で、かなり好みの別れる作品であると同時に、強い磁場を持った作品だとも思います。
粗削りではありますが、非常に鮮烈に心に残る、ライトノベルらしい作品ですね。

2002.11


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