(えぬえけい・はやみねかおる/講談社KCデラックス・1巻〜)
岩崎亜衣はエイプリルフールの日、家のとなりにある「幽霊屋敷」と呼ばれていた古い洋館に新たな住人がやって来たのを知る。
その住人が掲げた表札「名探偵 夢水清志郎」に興味を引かれ、さっそく隣家を訪ねる亜衣。
現れた黒ずくめ、長身の男・夢水は、元・論理学教授にして、名探偵となぞり、茫洋とした雰囲気とは裏腹に、亜衣の持つ秘密を、あっさりと解いて見せた。
さて。
「夢水清志郎」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、「双子探偵」のタイトルでNHKでドラマ化されていた・・・と言えばピンと来る人もいるのでは?
そう、マナカナが出演していたアレです。以前教育TVで「カードキャプターさくら」のアニメをやっていたとき、その前の時間帯に放映していたアレです。
それが今度はコミック化。ドラマ化はNHKでしたが、コミック化はNAK。そう、「B−ウォンテッド」のえぬえけいさんのかわい〜いキャラでコミック化なのです。
「夢水」の他、「虹北恭介シリーズ」などのライトミステリで幅広い年齢に支持されるはやみねかおるさんのストーリーと、「RsR」「B−」「ちゃんねるW」など、謎解き要素を含んだアップテンポなコミックで活躍するえぬえけいさんがタッグを組むんですから、これは面白くないわけがない。
亜衣&真衣&美衣のかわいいショートカット三姉妹と、黒ずく名探偵・清志郎のカルテットが元気一杯に画面を動き回り、えぬえさんらしい華やかでアップテンポなコマ使いで読者を限界までわくわくさせ、最後ははやみね流の優しく丁寧で、それでいて切れのある謎解きでキッパリ〆る。
もう、最初のエピソードを読み終えた瞬間に、「おっもしろーーーーーーーーーーーーい!」と満足の叫びをあげちゃいます。
「なかよし」系の作品ですから、読んでて暗くなるようなエピソードはなく、明るい気持ちでとにかくわくわくしながら謎に没頭出来ちゃえる、うれしくなるほど充実したライトミステリーです。
本作のヒロインは岩崎亜衣・真衣・美衣の、ショートカット三つ子姉妹。
えぬえけいさんの描くかわい〜いショートカット元気少女がトリプルで! なんですから、これは満足度抜群、萌え度三重丸。
三つ子それぞれの描きわけというのはあまり意識されてなくて、3人セットで登場して来ることが多いんですが、そんな中でも、長女らしくまっすぐで、しっかりした亜衣ちゃん、元気活発、ショートカット少女らしい強気さがかわいい真衣ちゃん、のほほんとしているように見えて、末っ子らしくそつがない美衣ちゃんとそれぞれの個性は垣間見えたりしています。
なんというか、それぞれのビミョーな違いを探して楽しむのが味わいのウチになってる、という感じ。まさに違いの分かる男のゴールドブレンドな萌え楽しみ方が出来ちゃうんですね。
夢水に振り回されながら、事件に巻き込まれていく三姉妹を見ているうちに、読み手も三つ子に手を引かれるようにぐいぐいと作品世界に呑み込まれちゃう、そんな感じでシンクロしちゃえるのは、三人の明るい性格、明るい笑顔があればこそ。
こんなかわいい三つ子の笑顔を見たら、あっと言う間に作品のトリコになっちゃいますよね!
character、って改めて項を作ってますけど、岩崎三姉妹を除けば、あとのメインキャラは作品タイトルにもなっている主人公、名探偵・夢水清志郎しかいませんね。
ちなみにこの夢水、「双子探偵」では和泉元禰が演じてたんですね。わはは、なかなかぐぅな配役だわ(←って「双子探偵」毎回見てたのに知らなかったような言い方するなよ・・・)(←いやぁ、マナカナしか見てなかったもんで・・・)。
年がら年中、黒づくめの服装に、黒いサングラス、針金のように細い体型。生活能力はまるでなく、自分のことには感動的なまでに無頓着、というのはいかにも名探偵らしいですね。
ハリガネというか、野原のススキというかな感じで茫洋としてたよりなさげな彼ですが、名探偵を自称しているのは伊達じゃなく、その謎解きは鮮やか。
切れ味鋭く謎の糸を解くだけじゃなく、その謎を二段構え三段構えで納得いくまで説明してみせる話術が見事で、さっすが名探偵!って感じですね。
ヒロインがかわいいのも大事だけど、ミステリ作品ですから名探偵が鮮やかなのも大事なポイント。
その点、夢水はきっちり合格ですね。
児童向け作品がベースということで、精緻なトリックや人間ドラマを楽しむという方向ではなく、ライト感覚で推理劇を楽しむ、という感じになりますね。
とはいえ、ストーリーの大半を謎と推理に割いているので、満足感は十分に得られると思います。
小説版が講談社青い鳥文庫から出ていますので、興味を持った方はこちらも併せてどうぞ。
2005.2