dear

(藤原ここあ/エニックスガンガンWINGコミックス・全12巻)

ノーマルモードへ

Story

人間でも魔者でもない、第三の存在・魔狼(ライカンスロープ)。
その最後の末裔・散葉(ちるは)はたったひとり、テレビだけを友に山奥でひっそり暮らしていたが、ある日意を決して人里へと下りる。
初めて出会う人や魔者に戸惑いつつも、積極的に接しようとする散葉。
そんな彼女が出会ったのが、魔者討伐隊の青年・杞扠(きさら)だった。彼の監視下に置かれた散葉は、なんとか仲良くなろうと(無駄な)努力をするが、クールな杞扠は取り付く島もなく・・・
藤原ここあさんの和み系フォークロアコメディの決定版。

Impression

仕事で寄った冬の日本橋電気街。
そこで突発的に「とらの○な」に突入して電撃的に購入してしまい、他に読む本があったにもかかわらず黒髪準和装純朴少女・散葉ちゃんの魅力に負けて電車待ちのプラットホームで読みはじめてしまい(萌え系のマンガは公衆の面前で読まないようにしてるんですけどね・・・)、さらには電車に乗った後は夢中になった挙げ句、電車を乗り越してしまったという電撃的萌え度を誇るまったりコメディファンタジーです(会社の皆さんごめんなさい・・・)。
作品の世界観は以前紹介した「私の狼さん。」や同一シリーズの「私の狼さん。-THE OTHER SIDE OF LYCANTHROPE-」と軌を同じくしており、ムードも同様のかけあいを重視したすっとぼけ&まったりコメディ。絵柄も単行本3冊目にしてかなりこなれて来ており、シリーズの集大成にふさわしい作品になっています。
それらにプラスしたこの作品の魅力となっているのが純朴度フル装備の黒髪ヒロイン・散葉ちゃん。そののほほんとしたピュアっぷりが、ひたすらに心地よく読み手をゆっくりと酔わせてくれます。
魔狼最後の末裔・散葉ちゃんが人里に下り、出会うひとつひとつの事柄に心ときめかせる様と、藤原さんお得意の「間」を巧く使ったかけあいが楽しい作品。これまで伏流として語られてきた「魔狼」の物語が本流となった記念すべき作品でもあり、いろんな意味で期待度大なのです。
藤原ファンにも、それ以外の人にもアピールする、ムード派ファンタジーの決定版。
かわいい系大好き!な方ならチェック必須!の作品です。

Chiruha

散葉ちゃん、萌え〜っ!
いや、日頃から黒髪黒髪黒髪黒髪と念仏のように唱えつづけているびぜんやですが、まさに彼女は黒髪美少女の究極形。散葉ちゃんほど萌え度の高い黒髪美少女もめったにいないのでは?と思うほど、理性破壊の限りを尽くしてくれるヒロインです。
どのへんが究極かとゆーとですね、やはり黒髪萌えとしては、黒髪少女に素朴なピュアさというのを求めてしまったりするわけで。
散葉ちゃんのそのシンプルな髪形に、準和装の民話的なコスチュームに、そして素朴な方言と世間知らずで純朴な言動に、ピュアさを感じるセンサーがぴぴぴっと反応してしまうんですね。
さらに準和装でありながら、ミニスカ風で美脚は拝めるし、オプションで狼耳はついてくるし。とにかくいたれりつくせりで、読者の萌え心をくすぐってくれるんですよね〜。
もちろん姿だけじゃなく、心もピュアなのが散葉ちゃん。
人との触れ合いを求め、初めて遭った人たちとのひとつひとつのやりとりを記念にしようとする朴訥さや、それらの人への気遣い(ここがコメディ要素になってるわけなんですが)、TVの占いとか、ささいなことにも勇気づけられる素直さ、そんな部分に読み手の心も原初の清流に洗われるがごとく、癒されるんですよね〜。
もう生半可な癒しも、中途半端な清純もいらない。
散葉ちゃんがいれば、私の心はめろめろ〜と和んでしまうのです。

Charactor

ヒロイン・散葉ちゃんさえ霞むような存在感を示しているサブキャラ。
それが魔者討伐隊の隊長、ケイン・クレバートです。
討伐隊長という肩書から受けるイメージとは裏腹に、純朴路線の作品世界にも構うことなく、エアコンの効いた部屋で、タキシードを身につけワインを傾けるというエレガントな異彩ぶりを発揮。
とにかく「美」を愛でる心を優先するそのイカレた行動論理には呆れを通り越して、拍手喝采を送ってしまいたくなる、そんな異色のキャラクターです。
討伐隊副長・杞扠(きさら。本当は木偏なんですけどね)は言葉すくなながら、ぼけぼけの散葉ちゃんに的確なツッコミを入れてくれるナイスなパートナー。物語の核心を握る存在でもあり、気になるキャラクターですね。
気になると言えば、第一話でちょこっと登場した前々作「わたしの狼さん。」の小桃ちゃん、前作「私の狼さん。-THE OTHER SIDE OF LYCANTHROPE-」のプリノちゃんがどうストーリーに絡んで来るのかも気になるところですね。

Guide

このHPに来てくださる方の多くに気に入っていただけるのではないかな、という感じの、ある意味平均値的な作品ですね。絵柄といい、ムードといい・・・
基本的にはキャラクターとかけあいを楽しむタイプの作品。散葉ちゃんのまったり純朴なキャラにどのくらいハマれるか、が分かれ道ですね。
「わたしの狼さん。」シリーズと世界観を共有していますが、同シリーズを知らなくても楽しむことが出来ます。とはいえ、せっかくなのでこれらの作品に目を通しておくことをおすすめします。

2003.3