(からけみ/芳文社まんがタイムコミックス・1〜5巻)
長野県長野市、善光寺からもほど近い繁華街の権堂交番。そこに勤務する若き熱血巡査の穂苅くんと、ポーカーフェイスなヴェテラン巡査部長・手塚さんのコンビが、街の平和を守る日常を描く。
なんと長野県警公認の、おまわりさんの仕事と長野県民の日常がよくわかる、お仕事&ローカル四コマ。
作者は信州小川村を舞台にした「JA〜女子によるアグリカルチャー」でもアドヴァイザー的役割を果たしていた、長野県出身のからけみさん。
そのからけみさんが、今度は長野中央署権堂交番を舞台にスタートさせたのがこの作品です。
当初は長野中央署の公式サイトで、PRマンガとして始まったこの作品。地元紙でも紹介され、「長野中央署はじまったな」「それにしてもこのキャラクターは水○豊主演の某刑事ドラマを彷彿とさせるようなさせないような……」などと地元のマンガ好きの中で静かに注目されていたわけなんですが、それがあれよあれよという間に雑誌連載、そしてコミックス化という事態に発展。
今や、長野県内ではコンビニでもフツーに置いてあるヒット作になっちゃっているのです。正直、目が点ですわ。
長野駅と善光寺の間にある実在の繁華街、実在の交番を舞台に、等身大のキャラが日常を送るだけの作品。
「○棒」みたいなサスペンス要素はなく、なんとも地味な作品ですが、地に足のついた感じがして落ち着けて、これはこれで手応えのある作品なんですね〜。
警察官が主役でありながら、血なまぐさい要素はなく、物語はつねにハートウォーミング。それが信州の雰囲気と相まって、実に心地いい作品になっているのです。
本編の主人公が長野県警長野中央署権堂交番の元気印・穂苅士朗巡査。いかにも信州を舞台にした警察ものの主人公にふさわしい、純情素朴、直情径行、単純明快な熱血漢です。経験が浅くて、知らないことも失敗することも多いけれど、けしてめげずに明るく前を向く姿が実に若々しく、そして頼もしいですねぇ。……誰ですか、理屈っぽくなく直情径行なんて信州人らしくないなんて言っているのは。
その穂苅くんの指導役であり名コンビを組むのがヴェテラン・手塚衛巡査部長。熱血が空回りするきらいのある穂苅くんとは対照的に、常に冷静沈着。豊富な知識と洞察力で、権堂一帯でおこる様々なトラブルをスマートに解決してくれる頼れるおまわりさんなのです。料理が得意でめったやたらと女子力が高いのもポイントですね。
いい味出している名脇役が桜井和弘巡査部長。剣道3段、柔道2段の猛者で、仕事も早い優秀な警察官なのですが、いかんせん女好きという性癖しか印象に残りません。ひたすら軽いけど、やるときはやる、そんなギャップがなんとも楽しい先輩なのです。
男性ばかりだ、若さが足りない。そういう向きには松本美希ちゃんをご紹介しましょう。長野県警のマスコット・ライポくんにベタ惚れの小学1年生。恋に一直線! なところが穂苅くんといいコンビのような気がしますね。落ち着いた作品に明るさをも散らしてくれる女のコなのです。
キャラクターで楽しむ側面もありますが、基本的には交番勤務のおまわりさんの仕事を実直に描いたエッセーコミック的な作品。
読むだけで警察官の様々な側面や、日常に潜む犯罪や危険のことを知ることが出来て、なかなかためになるマンガだったりします。全体的にクセがなく、警察ものだからと言って血が飛び散るわけでも人が死ぬわけでもなく、オーソドックスな日常四コマで読みやすいですね。
信州人的には、なかなかツボをついた信州の日常描写もくすりと笑えるポイント。信州以外の人にこのへんがどう映るのかは分かりませんが……。
2018.4