さくらマイマイ

(おしおしお/KADOKAWA MFCキューンシリーズ・1〜2巻)

ノーマルモードへ

Story

家庭教師に英才教育を受けていたお嬢様・一ノ瀬櫻子は高校生活を夢見ていた。
その夢をかなえるために選ばれた進学先はお嬢様学校の双葉ヶ丘女子学園。……のはずだったが、何の手違いか進学することになったのは一般学校の二葉ヶ丘女子学園、しかも入った寮は築60年の木造のボロ家、第三寮だった。
世間知らずのお嬢様がオンボロ女子寮で繰り広げる、微笑ましくもカオスな毎日を描く。

Impression

新創刊の萌え四コマ誌「コミックキューン」からは初のご紹介。
黒髪ぽんこつお嬢様・櫻子ちゃんがふんわりかわいい萌え四コマです。
木造オンボロ女子寮に、世間知らずのお嬢様がやって来て……というオープニングは、萌え系学園モノのテンプレ。キャラクターバランスもオーソドックスで、それじゃあ、どこにこの作品の注目点があるかと言うとですね。
……汁が多いんですよ。
夏目ちゃんが鼻血を吹きまくるのはまだ序の口、櫻子ちゃんの涎はコマの外までたれ落ちちゃってるし、撫子ちゃんの鼻水は顎からたれ落ちちゃってるし、櫻子ちゃんは鼻ちょうちん作っちゃってるし、涙は滝のようにじょばーと流れてっちゃうし、おかげで可憐なはずのヴィジュアルがなんともカオスなことになっちゃっているのです。
顔から出る汁という汁(ああ、そういえばまだゲ○は出てなかったか)(←それはさすがに……)が奔流のようにコマの外へとはみ出す、景気のいい新感覚四コマ。
それでいて見た目が不快な感じはなく「萌え」四コマとしての要素はしっかり満たしていますし、オーソドックスにしっかり四コマ目で落としてくる切れの良さが売りの作風で、しっかり笑えるのもうれしいポイント。
ふんわりまったり系萌え四コマと、少年系ハイテンションギャグを融合させてしまった、アヴァンギャルドでハイブリッドなニューウェーヴ。
徹底的にテンション高めて向かい合いたい、なんとも賑やかな新鋭です。

Sakurako Ichinose

腰まで伸びた黒髪に、おっきなリボンが可愛い純粋なお嬢様。
のひとことで一応、説明できるヒロインではあるのですが。
腰まで伸びた黒髪と、おっきなリボンと、可愛いルックスとお嬢様であるという点はまったくいささかも間違いも誇張もないんですが。
「純粋」という部分にはちょっと説明が必要なお嬢様、それが本編のヒロイン、一ノ瀬櫻子ちゃんです。
入るべき高校を間違えて、おんぼろ女子寮に入寮する羽目になっても、委細かまわずそのまま住み続けちゃうというあたりがなんとも天然と言うかおっとりと言うかぽんこつと言うかなんですが、そのぽんこつっぷりはそれに留まらず。
入学式には振り袖で行こうとするし、何の気なしに白紙の小切手を取り出してみたり、ブラックカードを取り出してみたりするし、プールにはなぜか銛を持ってくるし、「世間知らず」×「おっとり」=「純粋と言うよりはむしろぽんこつ」の方程式があっちこっちで成立しちゃってて、目が離せないお嬢様なのです。
でも、あちこちでカオスな状況を作り上げながら、最後はそのふんわりとした雰囲気で場をまとめてしまう、なんとも不思議でマッチポンプな主人公でもあるのです。

Charactor

二葉ヶ丘女子学園第三寮、略して「ふたさん寮」のメンバーはみんな個性的。
……の中で比較的常識人なのが海乃瑠璃ちゃん。大家代理をしているしっかりものの女のコです。しっかりものの大家代理なんて言うと、包容力のあるお姉様、なんてイメージも湧きますが、るーちゃんはその逆、幼児体型でちっちゃくて、小学生に間違われたり、櫻子ちゃんの妹に間違われたり。でも、しっかりものの妹分、っていうのもこれはこれでかわいくて、癒されますね〜。
元気印のツインテール少女が鈴森純ちゃん。その活発なキャラクターで引っ張っていくエンジン役であると同時に、気っ風のいいツッコミで四コマ目を〆るツッコミ役。ほんわかとしたボケ役の櫻子ちゃんと両輪になって、この作品のカラーを決定づけているキャラクターです。
純ちゃんの幼なじみが汐崎夏目ちゃん。クールで控えめな女のコ、という感じですが、純ちゃんが好きすぎて、いろいろ妄想したり、いろいろ暴走したり、果ては鼻血を迸らせたりと、なかなかアヴァンギャルドな女のコ。純ちゃんのことになるとすぐに真っ赤になっていっぱいいっぱいになっちゃう、その辺が実にキュートですねぇ。
もうひとり、寮に住んでいるのが山下里子先生。片方に結ったおだんごがチャームポイントの若い先生……と見せかけて、実はさん……28歳の若い先生です(汗)。三十路でおだんごとか……(嘲笑)。ふたりの妹には先に嫁に行かれ姪っ子も生まれ、すっかり嫁き遅れたアラサー、っつーかオーヴァーサーティで、特技はすぐに酒に逃げ、酒に溺れること。先に弟に嫁を取られ、甥っ子も出来、特技はすぐにヨッパラうことな私には、なんとも親近感な女教諭です。
最後に紹介は寮の外から、櫻子ちゃんの双子の妹、一ノ瀬撫子ちゃん。ちっちゃなリボンでちっちゃなツインテを作った、こちらも黒髪の美少女です。お姉ちゃんが大好き過ぎて過保護になっちゃってるツンデレっ娘。お姉ちゃんよりよっぽど出来がいいはずなのにお姉ちゃんが好きすぎて、やっぱりぽんこつになっている、なんとも愛らしい妹なのです。

Guide

黙っていればかわいい四コマなんですけどねぇ(遠い目)。
特にヒロインが鼻水でも涎でもたらしちゃう芸風はかなり読み手を選びそう。普通の萌え四コマと思ってジャケ買いした人の中には、かなり戸惑った人もいるんじゃないでしょうか。
一方、このノリがクセになった人には、まんがタイムKRコミックスから「神様とクインテット」が発売されているので、こちらもオススメ。こちらのほうがより汁分多めになっています。トーコなんか二日酔いでアレまで出しちゃってますし……(汗)

2015.11